つくしちゃんにはおねえちゃんがいます。二つ年上の四年生です。
頭がよくて物知りで、計算もはやくて、ピアノも上手。ちょっと怒りっぽくていばりんぼうだけど、つくしちゃんにとってじまんのおねえちゃんです。
おねえちゃんは、歩くとき、少し右足をひきずります。でも重いものはいつもおねえちゃんが持ちます。
ある日、学校の登校中に、つくしちゃんはランドセルの中身を全部道路に散らばしてしまいました。おねえちゃんは怒りながらも、すぐに教科書やノートを拾い集めてくれます。しかし大事な消しゴムが見つかりません。遅刻しそうになりながらも見つかるまで探してくれるおねえちゃん。登校時間まであと5分になった時、早く走れないおねえちゃんはつくしちゃんだけ走っていくよう言います。つくしちゃんは学校に着くなり、先生に必死でおねえちゃんが遅刻してしまった理由を話すのでした。
また、つくしちゃんが国語の時間に校庭を見ると、おねえちゃんがドッジボールをしています。おねえちゃんはぜんぜんボールに触れていません。おねえちゃんの方にボールが転がっても別の子が走ってきてボールをとってしまったり、おねえちゃんにパスしてくれる子がいないからです。その日の夕方、家に帰ると、庭でおねえちゃんが壁に向かってボールを投げる練習をしていました。おねえちゃんは、できないことがあると、くりかえしくりかえし練習するのです。
一見外ではしっかり強そうにしているおねえちゃんの違う一面をつくしちゃんは見つめます。いつも妹扱いされて悔しい思いもたくさんするけれど、おねえちゃんの右足のことを気にかけながら、おねえちゃんが人の知らないところで努力していたり、お母さんの前で泣いている姿など、いろいろな面があることを知っていきます。けれどもやっぱりおねえちゃんの方が一枚上手なことが分かるのが、おまつりの日の出来事。おねえちゃんはつくしちゃんが思う以上に、姉としてつくしちゃんのことを気にかけているのでしょう。
のんびりマイペースな妹のつくしちゃんと、優等生でがんばり屋のおねえちゃん。毎日の生活の中で繰り広げられる、姉妹の5つの物語は、お互いに相手を思いやる気持ちにあふれています。第68回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(小学校の低学年の部)にも選ばれているこちらのお話を書かれたのは、低学年向け読み物からYA作品までさまざまな年齢や立場の子どもたちの気持ちを丁寧に描き出すたくさんの著作があるいとうみくさん。全ページに丹地陽子さんの描くそれぞれの個性が伝わる姉妹の挿絵が入り、低学年の子どもたちでも楽しく読み進められる1冊となっています。
姉と妹が、笑ったり、泣いたり、けんかしたり‥‥‥。読む子どもたちの状況によって、どちらの気持ちにより共感するかなど感じ方はさまざまでしょう。姉妹という身近な関係だからこそ見えてくる姿や思いという部分にも注目したいところ。外からは見えないおねえちゃんの違う一面に友だちのことを思い浮かべたりもする人もいるかもしれませんね。姉妹それぞれの気持ちに触れながら、広くだれかの思いを想像するきっかけとなりそうな種が詰まった作品です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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