ママ、パパ、女の子の3人家族が、街での買い物を終えて海辺の家に帰る時でした。
電車に乗り込もうとした、その瞬間……
「あっ!」
女の子が手放してしまったのは、お店でもらった赤い風船。それでも電車は発車します、デデトト デデン。ふうわりふうわり、風船は高く高く空をのぼっていきました。
風船と電車、そして家族の、長い旅の始まりです。
雲間にいくつか赤いものが見えてきたけれど、どれが風船かな?
子どもたちに人気の間瀬なおかたさんによる「乗り物しかけ絵本」シリーズ、今回のしかけは電車での旅の途中の風船探し。風船に似たものって、結構ある……ここはよーく目を凝らして探さなくっちゃ、です。
豊かな自然や街並み、そこに暮らす人々の様子まで、電車が走り抜けていく風景は細やかに描かれていて、すみずみまでじっくりと読み楽しむ子どもたちの姿が目に浮かびます。
幼い頃に『赤い風船』という映画を観た間瀬さんにとって風船は、自由や夢、憧れとして心に残っているのだそう。絵本の中で空をふわふわと飛ぶ赤い風船は、読者の目にも同じように印象的な場面として刻まれるのではないでしょうか。
そうこうしながらも電車は進み、風船も空を飛んで行きます。森を抜け、湖や鉄橋を渡り、いよいよ電車は長い長いトンネルへ。風船は、どうなるのでしょうか……。
夕焼け空の海辺の街へと戻る家族とともに、最後までゆっくりと見守ってくださいね。
(竹原雅子 絵本ナビライター)
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