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- ためしよみ
絵本紹介
2023.07.24
もうすぐ夏休み。今年はどんな場所へ遊びに行けるかな? 近場でも遠方でも、いつもとは違うのりものに乗っておでかけするのも楽しみのひとつ。電車、新幹線、バスと、いろんなのりものが登場する絵本を集めてみました。朝日新聞社の本の情報サイト「好書好日」の記事よりご紹介します。(文:好書好日編集部)
電車好きの男の子が東京のいとこの家をめざして、お母さんと一緒にローカル線から新幹線に乗り継いで行くことに。『でんしゃにのったよ』(福音館書店)には、電車で鉄橋を渡ったり、駅弁を買ったりと、電車の旅をのんびり楽しんでいる様子が描かれています。作者の岡本雄司さんも無類の電車好きで、大人になった今でも旅をしながら電車や駅の絵を描き続けているとのこと。ぬくもりを感じる絵は、アウトラインは木版画で制作し、色紙や彩色した紙などを組み合わせて切り貼りしているのだそうです。電車の色味や風合いまでを表現しているところに、岡本さんの電車への深い愛が感じられます。
本作で「ぼく」が最初に乗った電車は、静岡県を走っている大井川鐵道がモデルなんですが、古い列車なので当然汚れやさびているところがあります。自分が電車を描いていて、そういった汚れがないと落ち着かないし、生活の匂いがする方が好きなんです。普通、汚れや色をつける時は上から色を重ねることが多いんですが、そうすると絵の具がモタモタとのって、どんどん重くなってしまうんですよ。そういう「苦労の跡」が見える感じが嫌なので、紙にローラーで色をつけたものを、色や汚れをつけたいところに刷って貼っています。(岡本雄司さんのインタビューより)
『でんしゃは うたう』(福音館書店)は、電車から聞こえるさまざまな音をユーモラスな擬音を使って表現した絵本。文章を担当した三宮麻由子さんは4歳で失明し、音の世界で生きてきました。この絵本を制作した当時は、以前と比べて電車の音が静かになってしまったそうで、絵本の制作は「電車らしい音」を探すところから始まったのだとか。「ぷしっごろろー」と扉が閉まり、「どだっとおーん」と電車が動き始め、スピードに乗ってくると「たたっ つつっつつ」という音が聞こえてきて……。たったひと駅の間を電車が走る様子を描いた作品ですが、電車が奏でる音の多さに驚かされるはずです。
絵本では、列車の一番前から見える景色が描かれていますが、音は一番前だと面白くないんです。1両目と最後尾車両はタイヤが2つしかないので、「たたっ たたっ たたっ たたっ」としか聞こえません。一番電車らしい音がするのは2両目から最後尾の前まで。ここで聞くと絵本にある「たたっ つつっつつ」が聞こえます。(三宮麻由子さんのインタビューより)
青森から鹿児島まで、列島縦断の旅を描いた絵本『新幹線のたび』(講談社)。春休みの朝、雪の青森を出発したはるかちゃんとお父さんは、「はやぶさ」「のぞみ」「さくら」と3つの新幹線を乗り継いで、鹿児島のおじいちゃんの家へ向かいます。沿線のパノラママップを眺めながら2人の旅をたどっていると、まるで新幹線に乗って一緒に旅をしているような気分になります。車窓からの眺めは、雪が残る冬の青森から、桜がほころびはじめた春の鹿児島へ。同じ1日の中で季節の移り変わりが感じられるのも、本作の楽しいところです。
出版社からの内容紹介
〃いままでとは違う〃角度から日本列島を眺める、
特大ポスターがついた『新幹線のたび』が登場!
2015年3月開業の、北陸新幹線E7系かがやきも走ります。
大パノラマで、新幹線とともに日本列島を縦断する『新幹線のたび』が登場したのは2011年3月。それから約4年が経ちました。新幹線は開業50周年を迎え、E7系・W7系「かがやき」やE6系「こまち」、デザインを新たにしたE3系「つばさ」などが登場。
そこで、『新幹線のたび』の本文中を走行する車両を差しかえ、さらに日本全国を南の方角からコマヤスカンさんが新たに描いた特大地図(ヨコ38p×タテ58p)がつきました。
はるかちゃんが新青森駅から新幹線を乗り継いでたどりついた鹿児島中央駅。まるで、その旅程をさかのぼるように、列島を眺めます。本文では盛り込めなかった北海道や日本海側も一目瞭然。阿蘇のカルデラ、日本アルプスの山脈など、平面地図ではなかなか感じることのできない日本列島の姿が、パノラマだからこそ楽しめます。
絵本を開いて、地図を広げて、日本列島縦断のたびをぜひ疑似体験してみてください!
ストーリー/
朝8時、はるかちゃんとお父さんは、雪の青森を出発します。太平洋側にでると雪はすっかり消え、草の緑も徐々に濃くなっていきます。東京駅につき、乗り継いだ東海道新幹線では、富士山を間近に眺めて感激。そして新大阪でいちばん新しい新幹線、「さくら」に乗り換え。日が傾いていく瀬戸内沿いを320キロで走り抜けていきます。九州に入ると菜の花があちこちに咲いています。熊本では、つばめが高く低く飛んでいます。そして夕方7時、「さくら」は桜がほころびはじめた夕暮れの鹿児島に到着します。
車窓からの景色は、防煙壁に遮られたりトンネルを通過したりで、見えないところも多いのですが、季節感を確認するという意味合いで乗りに行くことになったんです。ただ、その時点ではまだ、新青森駅から鹿児島中央駅までの全部を新幹線で行くことはできなかったので、新幹線の走っていないところは在来線をつないで行きました。実際に行ってみて、青森は雪景色なのに九州に行くと菜の花が咲いていて、同じ日本でもここまで季節感が違うのかと驚きましたね。(コマヤスカンさんのインタビューより)
こんなバスがあったら乗ってみたい? ダジャレを交えておしゃべりする不思議なバスが、「おいしいリンゴを食べたい」というネズミさんたちを乗せて「しゅっぱつしバス」と発車。山あり谷ありの道を進み、リンゴの木をめざして行きます。『いただきバス』(鈴木出版)は、作者の藤本ともひこさんが「子どもたちと一緒にふざけながら、おもしろく読める絵本を」と作った一冊。ダジャレだけでなく、バスが伸びたり、うずまきの形になったりと、予想外の展開に、読み聞かせをすると子どもたちがケラケラと笑い出すこと間違いなしの絵本です。
『いただきバス』は、ダジャレをきかせた語尾のところや、こちょこちょとくすぐる場面が子どもに人気で、「一緒にやってみよう」なんて言わなくても、子どものほうから真似してくすぐり出すんですよ。ぼくは、バスがうずまきの形になるところで、絵本ごとぐるぐる回して読むのが気持ちよくて好きなんです。絵本はこう読まないといけない、なんていうことはなくて、この本も自分なりに楽しく読み聞かせてほしいですね。(藤本ともひこさんのインタビューより)
『バスで おでかけ』(ひさかたチャイルド)は、ある一家がバスに乗り込むところから始まります。行き先は「すてきなところ」。物語の季節は暑い夏とは真逆の寒い冬ですが、バスでおでかけするワクワク感は変わりません。ページをめくるたびに移り変わっていく景色が楽しめます。バスは、スケート場、動物園、遊園地など次々と楽しそうな場所を通り過ぎていきますが、「でも きょうは べつの ところ」とお父さん。果たしてどこに着くのでしょうか。バスが進むにつれてどんどん濃密になっていく景色は、隅々まで見てみるといろんな発見があります。
文章には書いてないことも、いっぱい絵で描きました。例えば途中で雪が降り始めるでしょう? 一般的な絵本とか物語っていうのは「雪が降ってきました」みたいに書くけれど、僕は絵で描いた。そして、バスに乗っている人は、他のページでちゃんと降りているんです。例えば子どもがここにふたり座っているでしょう? この子たちは、途中でおじいさんとおばあさんが乗ってくると席を譲って立つの。そういうことが絵でわかる。絵は、飽きずに眺めても絶対新しい発見があるだろうと思うようなことを描き込みました。(間瀬なおかたさんのインタビューより)