こんなとき、なんていう? きもちをつたえるえほん
- 監修:
- 皆川 泰代
- 絵:
- ひらの ゆきこ
- 出版社:
- PHP研究所
絵本紹介
2025.11.21
最近、何を考えているのかわからないな。泣いて笑って怒って全身で伝えてくれた頃は手にとるようにわかった子どもの気持ち、いつからか話してくれなくなって。自分自身で悩んだり感情を消化したりするのは成長の証。でも、学校生活、友だちとの関係、進路、迷ったり行き詰まったりしたら「いつでもここにいるよ」と静かに見守っていたいものです。そして時には、そっと本を手渡したい。
自分が発したことばで起きた仲違い、だけどなぜ相手が怒っているかわからない……『きもちをつたえるえほん』はそんな時の助けになってくれる一冊。相手の立場にたった気持ちの伝え方や言い方を、具体的にアドバイスしてくれます。
『おれたちのラストイヤー』は、主人公ネイトの小学生最後の1年間を描いた物語。思春期に向かってどんどん広がり、複雑にもなる交友関係。誰にも素直に話せない心のうちをノートに書き出すことで自分を解き放っていくネイトに、背中を押してもらう子もきっといることでしょう。
贈る一冊が、子どもたちの人生の根っこに、心の栄養になってくれたら、こんな幸せなことはありませんね。
出版社からの内容紹介
本書は、うまく言葉にできない気持ちの伝え方や、状況にあわせた言い方の例を紹介しています。小学校入学前後の子どもたちにとって、心のうちを言葉にするのは簡単なことではありません。また、思っていることや気持ちを伝えるとき、言い方によって受けとられ方もちがってきます。
●なにかを かしてほしいとき
●がんばっているのに できないとき
●だれかが こまっていることに きづいたとき
●ゲームで まけたとき
●おなかや あたまが いたいとき
●じぶんや かぞくのことを はなすとき など
赤色のふきだしのような、とっさに口をついて出てしまいがちな言葉を、どのように言いかえると気持ちが伝わりやすくなるでしょうか。監修者からのアドバイスを参考にしながら、お子さんといっしょに考えてみてください。ご家庭や場面によっても、言葉の使い方はさまざまです。水色のふきだしのような本書で紹介している例にかぎらず、いろいろな言い方をお子さんといっしょに探してみましょう。
この書籍を作った人
慶應義塾大学文学部教授。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻にて博士(医学)取得。専門は発達認知神経科学、言語心理学、発達心理学。慶應義塾大学赤ちゃんラボを主宰し、乳幼児の言語や社会性の発達について研究を行う。著書に『聞くと話すの脳科学』『聴覚・発話に関する脳活動観測』(以上、コロナ社/共著)など。また、学術出版以外にも、赤ちゃん絵本『けろ けろ ぱくっ!』(幻冬舎)など絵本、玩具の監修多数。日本赤ちゃん学会編集委員長、日本光脳機能イメージング学会理事、日本神経科学会評議員などを務める。
この書籍を作った人
1973年生まれ。神奈川県在住。イラストレーター、絵本作家。絵本の作品に「おばけのやだもん」シリーズ、『おべんとうばこのぱっくん』(以上、教育画劇)、『チューくんといっしょ せいかつのおはなし』(ポプラ社)などがある。
この書籍を作った人
1967年、三重県生まれ。「子どもの本の専門店メリーゴーランド」の絵本塾で絵本づくりを学ぶ。2008年、『あっぱれ! てるてる王子』(講談社)で第30回講談社絵本新人賞を受賞し、絵本作家デビュー。2012年、『新幹線のたび〜はやぶさ・のぞみ・さくらで日本縦断〜』(講談社)で第43回講談社出版文化賞【絵本賞】を受賞。他の絵本作品に『新幹線のたび 〜金沢から新函館北斗、札幌へ〜』『決戦! どうぶつ関ヶ原』『トーキョー ドリーム マラソン』(以上、講談社)、『やねうらたんていモリー』(くもん出版)などがある。
みどころ
ケロケロ クワクワみずあそび♪
ケロケロクワクワたのしいな♪
かえるのきょうだいが遊んでいます。白いズボンがケロッカ。青いズボンはクワッカです。
二人はみずあそびが大好き。お母さんに「あちこちよごさないでね」と言われるそばから、どろんこ遊びをはじめました。
ケロケロクワクワ どろぺったん♪
ケロケロクワクワ たのしいな♪
すると楽しそうな二人につられ、トノサマガエルとウシガエルがやってきます。さらには木や花もやってきて……。
この絵本は、三重県桑名市に所在する国重要文化財指定の「六華苑」竣工110周年を記念して、地元在住の絵本作家はっとりひろきさんと桑名市がコラボレーションして作成した作品。六華苑の建物や庭園が舞台となっています。ケロッカとクワッカの住む和館と洋館が一つにくっついた珍しいおうちは、実は六華苑をモデルに描かれているのです。
なんと初版本の特典として、カバー裏に六華苑の解説がついています。おはなしを楽しんだ後は、親子でその歴史を知ることができますよ。きっと貴重で魅力的なこの場所を訪れたくなることでしょう。
この書籍を作った人
1928年アメリカ ニューヨーク生まれ。アート・スチューデンツ・リーグに学ぶ。『かいじゅうたちのいるところ』(冨山房)でコールデコット賞を受賞、その他『まよなかのだいどころ』『まどのそとのそのまたむこう』(冨山房)、『ロージーちゃんのひみつ』(偕成社)、『そんなときなんていう?』(岩波書店刊)、『くつがあったらなにをする?』(福音館書店刊)、『ミリー』(ほるぷ出版)他多数の作品がある。国際アンデルセン賞、ローラ・インガルス・ワイルダー賞、アストリッド・リンドグレーン記念文学賞などを受賞。
この書籍を作った人
〈1932年-〉群馬県生まれ。青山学院大学名誉教授。児童文学評論、創作、翻訳など、幅広く活躍。おもな訳書に『アーサー・ランサム全集』(岩波書店)、評論に『世界児童文学案内』(理論社)、創作に『たけのこくん』(大日本図書)などがある。
出版社からの内容紹介
少年・ネイトの詩で語られる小学生最後の1年間。
少年が自分の言葉を、居場所を、仲間を見つける力強い物語。
イギリスのさびれた町で暮らす少年・ネイト。本が大好きで、デイヴィッド・アーモンドに心酔している。かあちゃんと、父の違う弟ふたりのとの4人暮らし。とうちゃんはいない。弟のとうちゃんもいない。この9月に小学校6年生になった。5年生のときから、「6年生は中学に進学するまえの大事な1年だ」と先生から耳にタコができるほど言われてきた。みんながピリピリする、全国共通テストもある。そんな大事な「ラストイヤー」に、初めて親友のPSと別のクラスになってしまう。さらにPSはいじめっ子のターナーと急接近し、ネイトと距離をおくように。世界がひっくりかえったような衝撃。心の奥にいる「モンスター」が暴れ出しそうなのを、「すって はいて」の深呼吸で、なんとか「セイギョ」する。
担任は、ミュージシャンの夢をあきらめ、先生になった新任のジョシュア先生。ネイトの書く詩に惹きつけられ、「ひらめきノート」を手渡す。 「きみのなかに言葉がたまっている ネイト ペンを手にとって そっくり外に出してごらん」。そして、授業でデイヴィッド・アーモンドの『肩胛骨は翼のなごり』を取り上げ、「考えること、言葉や絵で物語ること」が世界と向き合うすべになると伝え続ける。
「ひらめきノート」に思いをかきつけ、だんだんと気持ちを言葉にすることができるようになっていくネイト。そして、頭のなかのすべてを絵にする少年・ケイレブと友情を育み始めた矢先、末の弟が倒れ、緊急入院することに――。
この書籍を作った人
絵本作家、イラストレーター。イギリス南部のブライトンで生まれ育ち、西イングランド大学ブリスタル校でイラストレーションを学ぶ。現在ロンドン在住。邦訳された絵本に『いっぴきぐらしのジュリアン』(岩崎書店)『エリンとまっくろ岩のひみつ』(評論社)がある。
文:竹原雅子 編集:木村春子