つきのうさぎ 改訂版
- 文・絵:
- まつむら まさこ
- 出版社:
- 瑞雲舎
絵本紹介
2025.10.23
最近、不安やプレッシャーを感じることはありませんか。気持ちが重かったり、ストレスに追い立てられたりしていませんか。そんなとき、私たちの体は無意識に呼吸が浅くなっているんだそうです。
こわばったマイナス思考をときほぐすのに効果的なのが、深呼吸。そしておすすめなのが、子どもの本。
道に迷う老人に出会ったけれど何もできないうさぎ。一緒に暮らすおばあちゃんが得意の針仕事をしなくなり、心配するカヤネズミの男の子。直面した状況に彼らはどんなふうに向き合うのでしょう?
掘りたての大根をいのししにおすそ分けしたら「ふろふき大根の会」に招待されたり。「相談があるんだけど」といきなり肉マンがやってきたり!不思議で奇想天外な安房直子さんや長新太さんの童話に、凝り固まった肩や脳みそもやわらかくなっていくようです。
身の毛がよだつ小泉八雲の怪談や、大自然と人間の営みに触れる作品は、読む人の心を揺すぶります。
今、目の前にあることは一旦脇に置いて。シンプルなことば、あたたかなストーリー、優しいイラストに身も心もゆだねてみてください。
この書籍を作った人
1943年、東京都生まれ。日本女子大学国文科卒業。在学中より山室静氏に師事、「目白児童文学」「海賊」を中心に、かずかずの美しい物語を発表。『さんしょっこ』第3回日本児童文学者協会新人賞、『北風のわすれたハンカチ』第19回サンケイ児童出版文化賞推薦、『風と木の歌』第22回小学館文学賞、『遠い野ばらの村』第20回野間児童文芸賞、『山の童話 風のローラースケート』第3回新見南吉児童文学賞、『花豆の煮えるまで―小夜の物語』赤い鳥文学賞特別賞、受賞作多数。1993年永眠。
この書籍を作った人
1967年、北海道生まれ。絵本画家、童画家。一橋大学社会学部卒業(社会人類学専攻)。印刷会社勤務の傍ら美学校造形基礎教場に通う。 退社して同校シルクスクリーン工房に3年間在籍。月刊漫画誌「ガロ」入選('95年)を機に漫画家兼イラストレーターとなる。2007年頃から、子ども向けの創作に専念。子どものためのお絵描き教室やワークショップの手伝いなどをしながら、絵本作家を志す。絵本に『山菜の絵本』(農文協)、『月宮殿のおつかい』(幻冬舎メディアコンサルティング)など。
みどころ
ある村に「涙つぼ」と呼ばれている子どもがいました。ある日、その子のもとへ、頭のてっぺんからつま先まで真っ黒なおじさんがやってきます。おじさんは「私は涙を集める人なんだ」と名乗り、大きな黒いカバンを開いて見せます。その中には黒いシルクの布に包まれた箱があり、大きさも形も様々な涙が宝石のように並んでいました。
「オレンジがかったこの涙は、とても腹が立ったときに流す涙……、灰色がかったこっちの涙は、嘘で流す涙……、薄紫色の涙は間違いを後悔したときに流す涙……」
他にも、濃い紫色の涙、赤黒い涙、ピンク色の涙……とたくさんの涙を持っているおじさん。しかし、このどれでもない、世界で最も美しい「純粋な涙」を探していて、その涙を「涙つぼ」とずっとからかわれてきた子どもが持っているのではないかと言います。その後おじさんの道連れである「青い明け方の鳥」に導かれて、子どもはおじさんが向かう目的地まで一緒に旅をすることに。旅を通して、おじさんが見せてくれたもの、出会わせてくれたものは、子どもにどんな変化をもたらしていくのでしょうか。
本作の魅力は数え切れないほどあります。
私たちが何気なく流している涙にこんなにも様々な種類があるというその豊かさに気づかせてくれること。
涙の色や自然の描写をはじめ、物語の中に鮮やかな色彩が満ちあふれていること。
小さな桃色の体に青い翼と尻尾をもつ「青い明け方の鳥」が魅力的で、子どもの旅に優しく寄り添う姿がホッとさせてくれる存在であること。
さらに、おじさんが持っている、キラキラ粉とピカピカ粉。真っ黒なおじさんと対比するように登場する真っ白なお爺さん。影の涙の存在……など童話らしい楽しさがあちこちに散りばめられています。
ノーベル文学賞作家・ハン・ガンさんが描く、涙をめぐるあたたかな希望の物語。やわらかく美しい文体は、ハン・ガンさんの作品を初めて読む方にもおすすめです。また、ハン・ガンさんご自身が長年のファンでいらしたというjunaidaさんの挿絵は、ハン・ガンさんの童話世界をさらに奥深く、神秘的に彩っています。物語を読んだ後にあらためて表紙を眺めるとまた新たに発見することがあるかもしれません。
涙を流すという行為が、いかに人の心を救い、浄化させるのか。そして、表面的な涙の有無だけでは測れない、人が心に抱える悲しみや希望について、深く考えるきっかけを与えてくれるあたたかな物語です。
この書籍を作った人
1970年、韓国・光州生まれ。延世大学国文学科を卒業。1994年、ソウル新聞新春文芸に短編「赤い碇」が当選し、作家デビュー。2005年、『菜食主義者』(クオン)で李箱文学賞を、また同作で2016年にアジア人初の国際ブッカー賞を受賞。2017年、『少年が来る』(クオン)でイタリアのマラパルテ賞、2023年、『別れを告げない』(白水社)でフランスのメディシス賞(外国小説部門)、また同作で2024年、フランスのエミール・ギメ アジア文学賞を受賞。2024年、「過去のトラウマに向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」が評価され、ノーベル文学賞を受賞。他に『引き出しに夕方をしまっておいた』『そっと 静かに』(以上クオン)、『ギリシャ語の時間』(晶文社)、『すべての、白いものたちの』(河出書房新社)、『回復する人間』(白水社)などが邦訳されている。
この書籍を作った人
韓国生まれ。韓国の誠信女子大学、同大学院を卒業し、専修大学大学院日本文学科で博士号を取得。日韓の文学作品の紹介と翻訳に携わる。訳書にハン・ガン『菜食主義者』、キム・エラン『どきどき僕の人生』、キム・ヨンス『ワンダーボーイ』、ピョン・ヘヨン『アオイガーデン』、シン・ギョンスク『オルガンのあった場所』(以上クオン)、孔枝泳『愛のあとにくるもの』(幻冬舎)など。共訳書にハン・ガン『引き出しに夕方をしまっておいた』(クオン)など。著書に『在日朝鮮人女性文学論』(作品社)がある。韓国語訳書の津島佑子『笑いオオカミ』にて板雨翻訳賞を受賞。
みどころ
世界中で知られる童話「シンデレラ」。
安野光雅さんの美しい絵と茶目っ気のある語り口に、いっそうお話のおもしろさ、滑稽さがにじみ出ます。
実はこの本、1974年に刊行された童謡絵本シリーズ「ドレミファランド」の中からミュージカルのお話を抜粋し1冊にまとめたものの復刊なのです。
安野さんの絵本作家デビューは『ふしぎなえ』(1968年刊行)。『ABCの本』『さかさま』など代表作を次々世に送り出した時代の、『シンデレラ』は絵本作家として初期に描かれた貴重な作品の一つと言えるでしょう。
見どころはなんと言っても絵!
シンデレラがお城をめざし、馬車で石橋を渡る場面のダイナミックな構図と水彩の美しさ。
柱やテーブルの木目が描きこまれた部屋。
あたたかみのある生活道具(タンス、やかん、鍋、皿、時計、ランプ・・・)。
屋根や煙突のレンガ一つ一つが描かれる、圧巻の立体感。
あちこちに登場するトカゲやねずみの表情もユーモラス。
魔法使いのおばあさんがどのページにも隠れていて(柱の陰や、皿や旗の絵の中から)シンデレラを見守っているのもポイントです。
大人も子どもも楽しめる、安野光雅さんの魅力が凝縮した傑作物語絵本です。
この書籍を作った人
1926 年、島根県津和野町生まれ。美術にとどまらず、文学、数学など、創作の分野は多岐にわたる。国際アンデルセン賞、菊池寛賞、文化功労者など、受賞・受章多数。絵本に『ふしぎなえ』『さかさま』『ふしぎなさーかす』『もりのえほん』『あいうえおみせ』『ABC の本』『あいうえおの本』『天動説の絵本』「旅の絵本」シリーズ (以上、福音館書店)、『繪本 平家物語』(講談社)、『魔法使いの ABC』(童話屋) など。著書に『かんがえる子ども』(福音館書店)、『絵のある人生』(岩波書店)、『本が好き』(山川出版社) など。故郷の津和野町には安野光雅美術館がある。2020 年 12 月没。
出版社からの内容紹介
高い山の上の、ほんの小さなひとしずくからはじまった川が、次第に大きくなりながら、さまざまな風景の中を縫って流れ、海までの長い道を辿る。そのたびの様子が、五つの小さなまつぼっくりの目を通して描かれます。まつぼっくりたちは、流れにのって運ばれていくうちに、森や草地、滝や湿地に出会い、さらには、中洲にできた大きな都会をぬけ、川とともに大海原にたどりつく。
その旅路の途中で、まつぼっくりたちは、ひとつ、またひとつと、「自分の」場所を見つけ、旅をつづけるほかの仲間達と別れて、その新しいすみかにとどまる。最後までひとり旅をつづけ
海に出たまつぼっくりは、どうなるのだろう? なじみのある題材に独自の観点をもちこみ、幼い子どもに自然の生態、環境を理解してもらえる美しい色彩で描かれた絵本。
この書籍を作った人
1942年、イギリスに生まれる。父親は建築家、母親は舞台装飾家という恵まれた家庭で育つ。幼い頃から絵が好きで、絵を描くこと、お話をつくることは彼女の楽しみで、4歳のときにビアトリクス・ポターの影響を受けてつくった初めての本は現在も残っている。ケント州のメイドストーン美術学校で学び、絵本作家のブライアン・ワイルドスミスに師事した。これまでに、グリムやアンデルセン童話の挿絵を中心に最近は創作絵本も手がける。イギリス・ケント州在住。
この書籍を作った人
1935年神戸市に生まれる。神戸女学院大学英文学科、慶應義塾大学図書館学科卒業。1961年渡米。ウェスタンミシガン大学大学院で児童図書館学専攻後、ボルチモア市立イーノック・プラット公共図書館に勤務。帰国後、大阪市立中央図書館を経て、自宅で家庭文庫を開き、児童文学の翻訳、創作、研究を続ける。1974年、石井桃子氏らと共に財団法人東京子ども図書館を設立。2015年まで理事長を務めた後、同館名誉理事長。文化功労者。著書に『子どもと本』『えほんのせかい こどものせかい』創作に『なぞなぞのすきな女の子』『とこちゃんはどこ』、翻訳に『しろいうさぎとくろいうさぎ』、「うさこちゃん」・「パディントンの本」シリーズなど多数。
出版社からの内容紹介
米ニューベリー賞受賞!動物たちの大冒険
光の速さで走ることができ、だれからも見えない存在であることを誇りに思っている「犬」のヨハネスは、仲間の動物たちと暮らす公園で、彼にしかできない大切な役割を担っている。それは、<アイ(目)>となって公園をすみずみまで観察し、バランスの守護者に変化を報告すること。
ある出来事をきっかけに、自由の喜び、自由の素晴らしさに目覚め、仲間の動物たちと無謀とも思える計画を思いつく・・・・・・。
アメリカで最も優れた児童文学におくられるニューベリー賞を受賞し、世界16か国語に翻訳されている注目の作品。最後はあっと驚く展開と、視界が広がるような読後感が待っている。
【編集担当からのおすすめ情報】
アメリカで最も優れた児童文学におくられる「ニューベリー賞」を受賞し、NYタイムズのベストセラーに17週連続でランクインした、とても楽しくユニークな作品です。
クラシカルな名画のなかを、ヨハネスが走る挿絵も印象的。
とにかく速く、光のように、自由の輝く世界へ走り抜けていきたくなる、独創的な物語です。
この書籍を作った人
作家、編集者。両親を早くになくしたがために幼い弟をひとりで育てることになったいきさつを書いた、青春小説のような回想録『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』(文藝春秋)でデビュー。文芸雑誌の編集や社会活動に積極的にかかわりながら小説もてがける。『王様のためのホログラム』『ザ・サークル』(以上、早川書房)は映画化もされた。サンフランシスコ在住。
この書籍を作った人
(戸田幸四郎 1931年−2011年)山形県尾花沢市生まれ。都市計画から店舗デザイン、グラフィックまであらゆるデザインを仕事とする。51歳の時、デザイナーから絵本作家に転向。80歳で亡くなるまで42作品を発表。そのどれもがロングセラーとなる。絵はもちろん、ひらがなまで全てをデザインした『あいうえおえほん』は累計100万部を超え、日本の知育絵本の草分けと評されている。他にも宮沢賢治・太宰治などの文に重厚な絵を描いた名作絵本集や環境をテーマにした創作絵本集など出版。静岡県熱海市には自身が建築デザインから手がけた戸田幸四郎絵本美術館がある。
この書籍を作った人
小泉八雲こと英国名パトリック・ラフカディオ・ハーンは、一八五〇(嘉永三)年六月二十七日、ギリシアのイオニア諸島の一つレフカダ島に生まれました。アイルランド人軍医の父とギリシア人の母の次男でした。 移民として単身米国に渡ったハーンは、新聞記者、文芸評論家として実績をあげ、西インド諸島滞在を経て、一八九〇(明治二十三)年四月四日、来日を果たします。古き良き伝統や伝承を大切にする日本の風土に魅了されたハーンは、大学講師のかたわら独自の日本研究に邁進。セツ夫人との結婚を機に「小泉八雲」と改名して帰化。『怪談』『骨董』ほか数々の名著を著しました。2025年のNHK朝ドラ「ばけばけ」でも話題に。
この書籍を作った人
1957年、山形県生まれ。児童文学作家。『銀のうさぎ』(高田三郎・絵、新日本出版社)で日本児童文学者協会新人賞、『ぬくい山のきつね』(宮本忠夫・絵、新日本出版社)で日本児童文学者協会賞・新美南吉児童文学賞、絵本『たぬきの花よめ道中』(町田尚子・絵、岩崎書店)で日本絵本賞受賞、同じく絵本『じぶんの木』(松成真理子・絵、岩崎書店)でひろすけ童話賞、『じゅげむの夏』(マメイケダ・絵、佼成出版社)で産経児童出版文化賞JR賞・小学館児童出版文化賞を受賞など、受賞多数。そのほかにも読み物、絵本ともに作品多数。
この書籍を作った人
1992年生まれ。島根県生まれ。画家、イラストレーター。食べたごはんをよく描いている。絵本の作品に『おなかがへった』(WAVE出版)、『えきべんふうけい』(あかね書房)など。展覧会での発表や書籍・雑誌の装画など、幅広く活躍中。
この書籍を作った人
1927年東京生まれ。蒲田工業高校卒業。「おしゃべりなたまごやき」(福音館書店刊)で文芸春秋漫画賞、国際アンデルセン賞国内賞、「はるですよふくろうおばさん」(講談社刊)で講談社出版文化賞受賞。「たぬきのじどうしゃ」(偕成社刊)「みみずのオッサン」(童心社刊)などの作品がある。
文:竹原雅子 編集:木村春子