世界中で知られる童話「シンデレラ」。
安野光雅さんの美しい絵と茶目っ気のある語り口に、いっそうお話のおもしろさ、滑稽さがにじみ出ます。
実はこの本、1974年に刊行された童謡絵本シリーズ「ドレミファランド」の中からミュージカルのお話を抜粋し1冊にまとめたものの復刊なのです。
安野さんの絵本作家デビューは『ふしぎなえ』(1968年刊行)。『ABCの本』『さかさま』など代表作を次々世に送り出した時代の、『シンデレラ』は絵本作家として初期に描かれた貴重な作品の一つと言えるでしょう。
見どころはなんと言っても絵!
シンデレラがお城をめざし、馬車で石橋を渡る場面のダイナミックな構図と水彩の美しさ。
柱やテーブルの木目が描きこまれた部屋。
あたたかみのある生活道具(タンス、やかん、鍋、皿、時計、ランプ・・・)。
屋根や煙突のレンガ一つ一つが描かれる、圧巻の立体感。
あちこちに登場するトカゲやねずみの表情もユーモラス。
魔法使いのおばあさんがどのページにも隠れていて(柱の陰や、皿や旗の絵の中から)シンデレラを見守っているのもポイントです。
大人も子どもも楽しめる、安野光雅さんの魅力が凝縮した傑作物語絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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