毎晩むすめは山をこえ、若者のもとへと走る。その手には、ひとにぎりの米が…おとめのひたむきな心を歌いあげる!
この絵本には「民話」という言葉はついていませんが、信州に伝わる民話のようです。調べると、松代と山口村という地名がでてきます。この二つの土地の間には、やはり山がいくつかあるそうです。つつじが美しい場所が、きっとあるのでしょう。その昔、このような激しい恋が実際にあったのでしょうか?それとも誰か、想像をたくましくして、こういうお話を考えた人がいたのでしょうか?
手の中の米が餅になってしまうほどの激しさと情熱で男を恋い焦がれる娘と、それをだんだん疎ましく感じて、娘を崖から落としてしまう男。なんということ!と驚く一方、冷静に顧みれば、この現代でも、同じような愛憎の事件は、度々報道されています。人の心は、いつの時代も同じようなものなのだと思いました。
丸木俊さんの絵は、夜の暗闇、山の奥深さを表した黒と、娘の着物、咲き乱れるつつじの花の赤との対比が印象的です。そして、にじみを生かした絵に、人の心の情念のようなものが表れていると感じました。
初々しい娘が恋の深みに はまっていき、どんどん、面替わりしていく様子には鬼気迫るものがあります。そして、娘は崖から落ちて・・・。切なく悲しい恋のおはなしです。 (なみ@えほんさん 50代・ママ )
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