10万年も生きたクジラならば、いろんな物語を知っているのでしょう。
その物語のひとつひとつを本にしたような、クジラ図書館だと思いました。
それを海の生き物たちが読みに訪れて、不思議な関係を保っていました。
クジラは哺乳類だから、呼吸するために海面に上がります。
そんな時に出会ったのが、海の配達夫でした。
出産まぎわの妻と暮らす配達夫には、自分の生活の物語がありました。
そして彼は読書好きでした。
クジラと配達夫の友情が、別の悲劇を生みました。
配達夫を待っていたクジラは捕鯨船に見つけられ、命を失ってしまうのです。
船員たちは、自分たちに無意味な本を海に放棄します。
ハッピーエンドは嫌いだという言葉が、妙に印象に残る本です。
配達夫は父親になり、捨てられた本は海辺で拾い上げられ、次の物語が準備されたようです。
ハッピーエンドではないけれど、この物語は終わっていないように思いました。