雪がしんしんふっています。森も野原もまっしろ。
おなかがすいたこうさぎは、外に食べ物を探しに出かけます。
雪にうもれた人参を2本見つけたこうさぎは、1本を「カリッ カリッ カリッ」と食べ終えておなかいっぱいになった後、かんがえました。
「こうさむくって、ゆきもふってちゃ、こうまくんは きっとたべものがなくて こまっているよ。このにんじんをとどけてあげよう!」
まっかな、大きい人参を抱えたこうさぎは、子馬の家へ急ぎます。
ところが子馬は留守でした。こうさぎは、人参をそっと置いて、帰っていきました。
そこへ帰ってきた子馬は、にんじんを見つけて、こうさぎくんがきっと持ってきてくれたのだとわかりました。
子馬はちょうど雪のなかで、かぶを見つけて食べたばかり。そこで…
「こうさむくって、ゆきもふってちゃ、ひつじさんは きっとたべものがなくて こまっているよ。このにんじんをとどけてあげよう!」
1本のにんじんが、こうさぎから子馬へ。子馬からひつじへ。ひつじから子鹿へ。そしてぐるっとまわって、また、こうさぎへ。
友だちへの思いやりの気持ちがめぐりめぐっていく、やさしさにあふれた絵本です。
『ゆきのひのおくりもの』は、フランスで50年以上読み継がれてきた、「ペール・カストール」シリーズの代表作です。
まだ子どもの本がほとんど存在していなかった時代に、子どもたちのために文章・絵ともに最高に質のいいものをと試み、フランスで実践的に創作された「ペール・カストール」シリーズは、世界の国々に影響を与えました。
本書はゲルダ・ミューラーの絵で、やさしい目の動物たちがいきいきと描かれます。
「みんななかよし、ああ、ともだちっていいなあ!」
最後の言葉が、こうさぎの巣穴の家のなかで、あたたかく響きます。
にんじん、かぶ、あかキャベツ…。みずみずしい野菜を雪の中でおいしそうにあじわう動物たちの姿も、愛らしく印象的な絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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