海水浴客でびっしり埋まった賑やかな海岸。女の子は砂浜で一人張り切ります。
「わたし おしろを つくるのが すきなのよ」
彼女は黙々と砂のお城を作ります。それは普通のお城じゃなく、うんと大きくて立派なもの。ドームや塔があって、ワニを放し飼いできるお堀があって。中に入ればオーシャンビューだし、波の音が聞こえるし、アイスクリームも食べ放題! すぐに世界中から王さまやお妃さまがやってきて、宴会場で派手なパーティ。みんなとっても楽しそう。
ところが、みんなが言い出した。豪華な朝食も遊び場もベッドも砂だらけ。かゆいし、眠れないし、みんなかんかん。仕方ないよね、砂のお城なんだから。そこで女の子は……?
ページをめくるたびにみるみる広がっていくのは、奇想天外、女の子の空想世界。その立派なお城にうっとりしながら、自分もいつか砂遊びをしていたことを思い出すのです。夢中になりながら、手も動かして。本物だと思ってると、やっぱり砂で。そしてやってくるのは、あっと驚く最後の展開。ああ、これこれ。この爽快感。
イスラエルの絵本作家が描く砂のお城は、どこか異国情緒もありながら、楽しむポイントは万国共通。独特な色彩やユーモラスな表情も魅力的。探し絵もしながら、隅々までしっかり味わえる1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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