「ああーん。やだやだ、やだよう」
ともちゃんは今日、どうしても学校に行きたくありません。ぽろぽろ、涙がとまりません。
「かどまで いけば、おともだちが まってるから。ねっ。」
お母さんもお仕事に行ってしまいました。ひとりぼっちのともちゃんが仕方なく歩いて角をまがると……そこにいたのは巨大な牛! 牛は、じろりとともちゃんを見ると言います。
「もっ」
ともちゃんが背中に乗ると、牛はゆっくりと歩きだします。それはそれはゆっくり、ちょうちょが追い抜いていくほどです。街中を通り抜け、やがてたどり着いた場所は……?
なんだか変わった牛と学校に行きたくないともちゃんの、可笑しくて愛らしいやりとりが続くこのお話は、児童文学作家・市川朔久子さんが初めて手がけた絵本作品です。絵本の中で描かれるのは、泣いていたことなんてすっかり忘れてしまうほど、のんびりゆったり、開放的で素敵な時間。
想像もつかないような出来事ばかりが続いたあと、元気いっぱいに日常に戻っていくともちゃんと牛。毎日生きていれば、おたがいに色々なことがあるよね……そんな会話が聞こえてきそうです。牛の背中に乗って登校。たまには、こんな日があったらいいのにね!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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