少年マイケルと愛犬ステラが流れ着いた“無人島”には、奇妙な日本人が一人、住みついていた。その人の名は「ケンスケ」。島のサルたちを守り、ひっそりと暮らしている旧日本兵だったー。南海の孤島を舞台に少年と老人の心の交流を描く。★2000年イギリス「子どもの本賞」
イギリスの児童作家、マイケル・モーパーゴは『戦火の馬』で知りました。
イギリスの作家なのにタイトルに日本人名……?なぜ?って、思いますよね?私はすごく不思議な感じがして、この作品のタイトルを聞いてからすぐ本書を探してきました。
主人公は“ケンスケ”ではなく、
突然働いていた工場が閉鎖になり、解雇された両親とともに家族でヨットの世界一周旅行に出かけた12歳の少年“マイケル”です。
仕事を切られたというのに、(多少は落ち込んでいましたが)すぐに切り替えて家族で旅に出よう!なんて、計画を立てて実行してしまうのは、国民性の違いでしょうか?
この物語はヨットで旅行中、船から落ちた愛犬を助けようとして自分も遭難してしまったマイケルが、無人島でひっそりと暮らしていた元日本兵の老人“ケンスケ”に助けられ、両親に再び出会うまで、その無人島でケンスケと島暮らしをするお話です。
本の見返しの部分には、マイケルの家族がヨットで旅した航路のが描かれていて、それを見るとマイケルは東南アジアのパプア・ニューギニア諸島のどこかの小島に流されたらしいということが分かります。
物語の中で、ケンスケがなぜ、こんな無人島にひっそり住んでいるのか、ケンスケがどんな人なのか、物語を読んでいくとわかりますが、決してお涙ちょうだいふうには描かれておらず、
起きた出来事をとつとつと語っている感じがあります。
このお話をもし、映像化とかしたら、きっとすごくドラマチックに描かれそうな気がします。
この作品、ぜひきちんと最後まで読んで、ほしいです。特に最後の章の「おわりに」と、訳者の後書き(解説)まで、しっかり読んでください。
(作者と主人公が同じ【マイケル】という名前なのでこの章を読むと、ホントにあったおはなしのような感じさえしてきます。)
作者がどんな資料を基にどんなふうに感じてこの物語を描かれたのか、この部分を読むと改めてていろんなことが分かります。
小学校高学年くらいのお子さんたちから、中学生・高校生に読んでもらたいたい1冊です。
特に、今年メディアで話題になった「永遠の0」など、戦争ものに興味のあるお子さんたち、華々しい戦士たちの活躍の下で、ひっそりとこんな風に生きていた兵士もいたのだと、知ることのできる作品です。 (てんぐざるさん 40代・ママ 女の子18歳、女の子13歳)
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