東日本大震災のあと、私たちは「絆」という言葉をよく口にしました。けれど、あれから数年経って、その言葉もあまり聞かれなくなりました。
でも、「絆」ってそんな流行に左右される言葉なのでしょうか。
2015年3月に出版されたこの絵本を読んで、久しぶりに「絆」という言葉を思い出しましたし、「絆」とはつながっていく思いのことなのだと今更のように気づかされました。
小さな町のはずれにある「Life(ライフ)」という店。
この店では「だれかが何かをおいていき、そして何かを持ってかえる」ことになっています。
そんなお店におじいさんを亡くしたおばあさんがやってきます。
おばあさんがおいていったのは、「春にさく花の種」。
そして、おばあさんが持ちかえったのは小さな「写真立て」。
次のお客は、おばあさんがおいていった花の種を手にして、とどんどんつながっていく物語。
その先、次の春、おばあさんがおいていった花の種はたくさんの花になって、おばあさんを包みます。
これは、そんな美しい物語。
おばあさんに光をあてればそんな物語が出来上がりますが、きっとこのお店を訪れたすべての人にも物語があるのでしょう。
いえ、この絵本を読んでいる私たちにも物語があります。
だって、この絵本こそ、「絆」そのものだから。
まさに「Life(ライフ)」こそが「絆」なのです。