「ケーキ」はコウくんお気に入りのどんぐり。おしりに名前を書いてもらってどこへ行くにもいっしょ。雨の日も、プール遊びの時も。ある秋の日に林の中で「ケーキ」はコウくんの鞄から転がり落ちてしまいます。「コウくん、ぼくはここだよ!」コウくんも一生懸命探しました。でも、何日かすると「ケーキ」は忘れられてしまいます。時は流れ、芽が出てどんぐりの若木になった「ケーキ」は、段々成長していくコウくんを遠くから見ています。
長い年月が経ったある日、サクサクという足音がして林の中へコウくんがやってきました。うれしくて、木をゆらしドングリをたくさん落とす「ケーキ」に、コウくんは思い出すのです。「ケーキ?」
読み終わって、シルヴァスタインの「おおきな木」を思い出しました。丘の上でかけっこする場面では「信じてること」を、林の中で見つけてもらえない場面では、「もどかしさ」を、コウくんの姿を見守る姿に「静かな愛」を感じます。
口に出してはいえない心の内面を描いた作品だと思います。
松成さんの絵は暖かく、夕焼けの赤、ランドセルで学校へ行く春の丘、何よりもコウくんの目線で描かれたおおきな「ケーキ」の姿が印象に残ります。最後の2行「うれしいことです。うれしいことです。」万感の想いのこもった2行です。
ここのところ、大切に読んであげたいです。