産まれてきた自分が、まだ何者でもなかった胎内回帰でしょうか。
まだ受精もできていなかったところまで遡るのでしょうか。
何でもなかった所から生誕の瞬間までを想像すると、果てしなく壮大な奇跡の海を、自分がたどってきたのだと感慨が生まれます。
阿部海太さんの幻想的で暗示的な絵に包まれて、言葉少なに語られる一語一語が能弁です。
多様性を考えるという意識もあるようですが、自覚も思考も生まれる前の軌跡は、何に操られていたのでしょうか。
そんな所から生まれ育った自分は、何者でもない凡人としてここまで来てしまいました。