オオカミが野原をずんずん歩いていると、向こうに知らないオオカミがいました。
「なんだ、あいつは? ここは、おれのなわばりだぞ。」
森でいちばん強い動物としていばっているオオカミが、足音荒く近づいていくと、
くるりとふりむいたオオカミは、なんと素敵なメスのオオカミでした!
「ドキン」としたオオカミは、メスのオオカミに話しかけたくてたまらなくなります。
「オレといっしょに、こんやの月でもみないか。」
そんなふうにかっこよく誘えたらどんなにいいでしょう。
恋したオオカミは、一歩足を踏み出しかけ……迷いはじめます。
オレよりもっとかっこよくて素敵なともだちが他にいるかもしれない。
いやな顔をされたら? きらわれたらどうしよう?
でも話しかけないとあとで後悔するかもしれない……。
みなさんもこんなふうにドキドキする気持ち、きっとわかりますよね。
初めて出会う誰かに話しかけるとき。しかもその誰かさんがすごく素敵で、仲よくなりたい相手だったら。
思いきって話しかけることができるでしょうか。
ドキンドキンとオオカミは胸をとどろかせながら、いっしょうけんめい自分をアピールしようとします。
男の子でも女の子でも、迷う気持ちは同じ!
きむらゆういちさんが、失敗ばかりのオオカミの様子をユーモラスに描いています。
田島征三さんは、オオカミのわきたつ心と、嵐のように揺れ動く気持ちをぐいぐいと力強い絵で描きます。
「もう、だめだあ。」
そう思う瞬間はなんだかとってもリアルで、子どもも大人も身につまされます。
日本絵本賞を受賞した『オオカミのおうさま』につづく、きむらゆういちさん、田島征三さんコンビが送るユニークな「オオカミの絵本」シリーズ第5弾。
へんてこでドジでいじっぱりなオオカミのことをもっと知りたくなったら、他の本もぜひ読んでみてくださいね。
共感することがいっぱいありそうですよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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