ある日、ママに抱っこされて、ぼくの家にやってきた「へんなの」。
ぼくが使っていたベッドに寝ている姿をじっと観察してみるけれど、見れば見るほど・・・へん!
へんなのがやってきてから家の中はすっかり変わっちゃった。
ママとパパ、ばあちゃんとおじいちゃんまで、ぼくに振り向かない「せなかにんげん」になっちゃうし。
「へんなの」なんてこなけりゃよかった。
「へんなの」なんて・・・そうだ!誰かに、あげちゃえばいいんだ!
変わった犬、珍しいねこ?見たこともないような外国の珍獣?
いえいえ、違います。もうおわかりですよね。
「へんなの」は、あかちゃん。本当は「ぼくのかわいい妹」のはず、なんですけどね。
大きなお腹を抱えて入院していったお母さんが、ある日突然連れて帰ってきたあかちゃん。
その姿を目の当たりにしたぼくのショック、はかりしれません。
それまではママもパパも、おばあちゃんもおじいちゃんだって、自分だけに笑いかけて、自分だけを抱きしめてくれたはずなのに。
そんなぼくが思いついた作戦は、大人にとってはとっても衝撃的!
お兄ちゃんお姉ちゃんはあかちゃんを「へんなの」なんて感じているの?あげちゃいたい、なんて思うものなの?
ふと、不安もよぎります。
そんな時は浜田桂子さんの描くぼくの表情を、ぜひじっくりと眺めてみてください。
悔しそうな顔、いじけている顔、いいことをひらめいた時の顔。
どれもわが子に、そして小さい頃、妹や弟に初めて出会ったときの自分の顔に・・・重なりませんか?
あの手この手を駆使してお友だちにアピールするのに、なかなかもらい手があらわれない「へんなの」、いやいや、妹。
とうとうぼくは、あかちゃんの訓練まで始めちゃうのです・・・そうしているうちに。
2人のほほえましい姿がくすぐったくて目尻が下がりながら、思わず涙腺まで緩んでしまったのは、わが家の数年前の懐かしい光景に重なってしまったからかな。
生まれたばかりのあかちゃん、新生児の時間はあっという間。
同じようにお兄ちゃんお姉ちゃんがあかちゃんを迎え入れ、大切な妹・弟としてその存在を受け止めるまでの時間も瞬く間に過ぎてしまうものです。
だからこそ。負けるな、おにいちゃん!負けるな、妹よ!
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
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