「ママ―! おにいちゃんがたたいたぁ!」
「キコがぼくの色鉛筆を勝手にとろうとしたから」
今日もジョーとキコはにぎやかに兄弟げんか。ママはどちらの話も聞いて、平等に叱ります。だけど二人は思うのです。「いつも怒られるのはぼく」「お兄ちゃんばっかり大事にされている」。そして大きな目で訴えるようにママに聞くのです。
「ねえ、ママ。どっちがすき?」
これは困った質問です。同じ状況になった時、どんな風に答えたらいいのでしょう。だって……こんなに可愛い二人なんですもの、選べるわけがないのです。だけど、ジョーとキコのママは、しばらく考えた後、フルーツバスケットの中のりんごとみかんを手にとると……。
答えは絵本を読んでから! だけど、ジョーくんとキコちゃんだけでなく、読んでいる私たちの方までどんどん幸せな気持ちになってくるほど、ママの話はとっても上手。心が満たされている様子がとっても伝わってきます。聞いてよかったね、二人とも。なんだか私まで二人のことが好きになってきちゃったよ。
「自分がほんとうに愛されているか、確かめたい」という子どもたちの思いを満たしてあげたい。だけど兄弟をくらべたり選んだりはしたくない。そんな家族の悩みに応えてくれるかのようなこの絵本、作者の繊細で優しい気持ちが込められているのでしょうね。そして、クリっとした目がそっくりな兄弟の表情が最高に可愛らしく、この絵本をとっても魅力的なものにしてくれています。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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