エマはオオカミが苦手。目をぎらっとひからせて、いきなりがぶっとかみついてくる。そんなオオカミが学校にもいる。最初は仲良しだって思っていたのに、ある日気がついたらオオカミに変身していた。
「エマののろま!」
オオカミになったエルザは、毎日いじわるをしてくるし、まわりの子も助けてくれない。エマはおなかがぎゅうっと重くなり、なにもできなくなった。誰にも言えない、どうしよう。そんなある日、エルザのいじめのターゲットがシモンになった。エマは……。
ベルギーの公立病院で心理カウンセラーとしても活動する心理学者が描いた、いじめをテーマとしたこの絵本。主人公の女の子エマは、いじめの「被害者」になり、自分を守るために「加害者」にもなるのです。でも、心はまったく軽くならないことに気がついて、ある行動に移していく。いじめは、いつの時代でもどこの国でもなかなかなくなりません。でも、いじめの起こる仕組みを知ることは、とっても大事なこと。そこから解決の糸口を見つけていくためのケアをしていくのは、やっぱり大人の大切な役目なのだと伝えてくれています。
導入部分には、「ストップいじめ!ナビ」の代表である荻上チキさんの解説も入って、絵本を読むためのガイドをしてくれています。
大人と子どもが一緒に繰り返しよむことで、いじめが起こることの怖さを知り、誰の身にも起こりえることだと自覚し、対処の方法を考えていく。そんなきっかけとなる一冊になればと思います。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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