表紙には、きのこの傘であまやどりする赤いオーバーオールのうさぎの子。
やわらかそうな耳、小さな手。なんて愛らしいのでしょう。
この本は、ちょっとこぶりな縦長の判型も可愛くて、表紙だけで一目惚れしてしまうのですが、
ページを開くと、さらにため息ものの美しさが待っています。
「はるになると はなが さく ぼくは はなを つむのが すき」
「ちょうちょうを おいかけて ちょうちょうに おいかけられて ぼくは あそぶ」
うさぎの男の子、ニコラスが、森のなかで楽しそうに遊びます。
季節が移り変わっていき、四季折々の自然の風景が描かれます。
春にはスミレ、スイセン、ハナミズキ。アゲハやシジミチョウ、たくさんの種類の蝶と遊び、夏には鳥の声を聴き、虫やカエルを眺めます。秋は紅葉、そして雪のふる冬がきて…。
作者は、アートディレクターで作家のオーレ・リソムと、世界中で愛されるロングセラー作家・イラストレーターのリチャード・スキャリー。
スキャリーはたくさんの作品の中で、子どもたちの身の回りにあるものを丁寧に紹介していますが、
この絵本でも、豊かな自然の中から子どもたちにも身近な植物や生き物をとりあげて、精密に描写しています。
原書『I am a Bunny』は1961年の出版。古びないけれど、どこか懐かしいような、クラシカルな魅力にあふれています。
どのページも色鮮やかで、季節ごとに飾っておきたくなるような美しさ。
木坂涼さんの詩のような訳も優しく、手元において時々読んで眺めたい絵本です。
ギフトにもおすすめ。雑貨や可愛いものが好きな大人の女性へ贈っても喜ばれそうですね。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
続きを読む