山がめざめて
- 訳:
- 梨木 香歩
- 出版社:
- ひさかたチャイルド
世界が始まり、何億年も経ったある日。命の歌が消え、山は目覚めた……。毎月発売される新作絵本の中から、絵本ナビが自信をもっておすすめする「NEXTプラチナブック」。今回ご紹介する絵本は『山がめざめて』。世界は何度でも始まる。梨木香歩さんの翻訳で味わう、未来への希望とつながる物語。どんな内容なのでしょう。
NEXTプラチナブックとは…?
絵本ナビに寄せられたレビュー評価、レビュー数、販売実績など、独自のロジックにより算出された人気ランキングのうち、上位1000作品を「絵本ナビプラチナブック」として選出し、対象作品に「プラチナブックメダル」の目印をつけてご案内しています。
そして、毎月発売される新作絵本の中からも、注目作品を選びたい! そんな方におすすめするのが「NEXTプラチナブック」です。3か月に一度選書会議を行い、「次のプラチナブック」として編集長の磯崎が自信を持って推薦する作品を「NEXTプラチナブックメダル」の目印をつけてご案内します。
命が奏でる歌を聞きながら、眠りについた山。
その間に過ぎていった時間は何億年。
そしてある日、歌が消え、山は目覚めた。
地球を舞台に、「世界のはじまり」から、遠く訪れる「未来」へと続いていくこの物語。私たち人間にとっては、あまりにも壮大で果てしない時間が経過していく。けれど、山にとってみれば、絶望の中で歩き回る1000年というのは、ほんの休息の時間。そこで見つけたわずかな希望に対して、焦ることなく、ゆっくりと見つめ、再び歌が聞こえてくるのを待つのです。
自然界の崩壊と再生を描きながら、どこかチャーミングでユーモラスな印象を感じるのは、主人公である山のコミカルなキャラクターと、コマ割りを多用した絵の表現によるものなのでしょうか。これほど長く生き続けている山にとっても、運命的な出会いを感じる場面では、まるでスローモーションのように一つ一つの動作と表情が丁寧に描かれ、いつまでも心に残ります。
添えられるのは、決して多くはないけれど、一つ一つに重みのある言葉。梨木香歩さんの翻訳で味わうことができます。
大地の歴史や環境の変化というのは、目の前で起きている出来事とは違う軸で動いているのかもしれないという事実。今、自分たちがここに生きているのは、奇跡かもしれないという認識。子どもたちにとっても、きっと希望となって心に刻まれる一冊となってくれるのではないでしょうか。
気が遠くなるようなスケールの中で
世界の中心は自分だけだった時代から、その認識が少しずつ広がっていき、世界にはもっとたくさんの友だちがいて、地球上にはもっともっとたくさんの生物が生きていて、宇宙から見れば地球は……。そんな風に視野が急速に広がっていった時、今いる自分とどのように結びつけて考えればいいのだろうかと、気が遠くなるような感覚を味わうことがありますよね。絵本の中で、山が美しいものを見て「うつくしい」と感動する場面があります。よく観察し、理解し、守ろうとする姿を見ながら、そこに私たち人間にとっても大切なヒントが隠されているような気がするのです。
この書籍を作った人
作家・イラストレーター。多くの絵本も手がけ、創造性豊かであたたかなユーモアあふれる作風が、国際的に高く評価されている。絵本作品『Eric the Postie』及び『Queen Celine』はそれぞれ2018年度、2020年度のCBCA(オーストラリア児童図書評議会)の推薦を受けた。メイ・ギブス児童文学トラストのフェローを二度務めている。
この書籍を作った人
作家。『西の魔女が死んだ』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『からくりからくさ』『家守綺譚』『春になったら莓を摘みに』(以上、新潮社)、『ほんとうのリーダーのみつけかた』(岩波書店)、『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』(以上、朝日新聞出版)、児童書に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』『ヤービと氷獣』(以上、福音館書店)、『ペンキや』『よんひゃくまんさいのびわこさん』(以上、理論社)、翻訳絵本『ひとつ ひとつの いのちに』(ひさかたチャイルド)、『わたしたちのたねまき』(のら書店)など著書多数。
磯崎 園子(いそざき そのこ)
絵本情報サイト「絵本ナビ」編集長。著書に『はじめての絵本 赤ちゃんから大人まで』(ほるぷ出版)、『ママの心に寄りそう絵本たち』(自由国民社)、監修に『父母&保育園の先生おすすめの赤ちゃん絵本200冊』『父母&保育園の先生おすすめのシリーズ絵本200冊』(玄光社)がある。