バラ色のほっぺたをした渡り鳥のローザは、どの花よりも早く春を告げ、長く咲く、じぶんのほっぺたと同じ色の<ほっぺのはな>が大好き。
草木が枯れ、秋から冬へと季節がかわりはじめても、ローザは動こうとしません。
仲間たちが「そろそろでかけよう。みなみのあたたかいばしょへ」と声をかけ、ローザはあわてます。「もうすこしまって」
草で編んだバッグに<ほっぺのはな>の種を入れ、最後まで咲いていた花をつみ、ローザは飛び立ちました。
まだ若いローザは、大人の鳥たちのようにうまくとべません。首にかけたバッグが重く、仲間から遅れはじめます。
つかれたローザはやがてゆっくりと落ちていき・・・大きな川に落ちてしまいます。
犬がローザを助け、自分の家へ連れていきました。犬のミールと飼い主のアンナは、ローザをなぐさめ、おだやかな時が流れます。ミールがバッグを見つけ、アンナが種を植木鉢にまき、やがて小さな芽を出して・・・。
堂々とゆたかに描かれた絵画的な美しさが印象的。灰色のローザの羽根一本一本、犬のミールの毛まで、さわったらあたたかさが伝わってきそうなソーニャ・ダウノスキの絵が、日本に絵本として紹介されるのははじめてです。
文章を書いたマイケル・J・ローゼンは、ロバート・サブダとのしかけ絵本『ハヌカーのあかり』の文章や、『イライジャの天使――ハヌカとクリスマスの物語』などを書いています。そして訳は、絵本『うきわねこ』(産経児童出版文化賞ニッポン放送賞受賞)の文章を手がけ、ますます活躍の場を広げる詩人、蜂飼耳さん。
原題The Forever Flowers(永遠の花)のとおり、季節とともに枯れてはまた咲く、別れと出会いがくりかえされる切なさと、永遠につづいていく美しさが画面いっぱいにとじこめられています。まるでこの一冊の本が<ほっぺのはな>の種が入ったバッグのように――。
大好きなものを決して手放さなかったローザの気持ちを、子どもたちはよくわかるでしょう。そしてそれ以上のものを本から感じとるに違いありません。
大人が読むのにもおすすめ。絵本をひらいたそこに、季節が流れる。そんなすばらしさを感じさせてくれる本がまたひとつ誕生しました。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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