フクロウ城という古いお城に住む小さいおばけは、気のいい夜おばけ。いつも真夜中12時きっかりに目をさまし、城の中で大砲をころがしたり、伯爵や将軍の肖像画を相手に、何百年も前のむかし話をしたりします。ときどきはミミズクのシューフーのもとをたずねておしゃべりを楽しみます。小さいおばけはいつも13個の鍵のついた鍵束をもっています。この鍵束をひとふりすると、どんな鍵も開くんですからとってもべんりなんです。
大好きな月夜のばんに「ヒッヒー! 月夜のフクロウ城は、なんてすてきなんだろう! ヒッヒー!」と、しあわせそうにふわっふわっと飛びまわる白い姿は、何百年も生きているはずなのに、まるでかわいいおばけの子どもみたいです。
そんなおばけが昼の世界をひとめ見たくてたまらなくなりました。シューフーは「日の光の話は、やめてくださらんか」「昼間なんて、ろくなものではありませんぞ」とていねいな口調できびしくおこりますが、小さいおばけは我慢できません。なんとか昼に起きようとして、しっぱいばかり。でもどんな運命のいたずらか、ある日、目がさめたら昼で・・・!?
最初のうちは喜んでいたおばけですが、白いからだが黒くなってしまうし、町の人に追い回されるし、おまけに大きな勘違いまでしてしまっていいことがありません。夜おばけにもどりたいのに、どうしたら夜の世界にもどれるのかわからない・・・。泣きだすおばけを助けてくれたのは誰だったでしょう? ドキドキのクライマックスを、読んで楽しんでくださいね。
オトフリート・プロイスラーといえば『大どろぼうホッツェンプロッツ』が有名ですが、『小さいおばけ』『小さい水の精』『小さい魔女』もファンが多いです。おばけや妖精のような不思議な存在が、ちょっぴりドジでかわいらしくて、でもドキドキするような力も持っていて・・・、ゆかいな友人みたいに感じられる物語には、独特の魅力があります。
あとがきによると、プロイスラーには語りが得意な祖母がいて、よくお話をしてもらっていたそうです。プロイスラーの作風や臨場感あふれる場面展開には、そんな子どものころの経験が影響しているのかもしれませんね。
『小さいおばけ』の物語をもりあげるのは、『大どろぼうホッツェンプロッツ』と同じ、フランツ・ヨーゼフ・トリップの挿絵。小さいおばけのせいで町の人たちが右往左往、大騒ぎになる様子が、絵からもたっぷり伝わってきます!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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