こんちゃんは、歌手のうたごえがあんまりすてきだったから、お手紙をかきます。とっておきの万年筆で、心をこめて。その気持ち、届くかな。すると……
その封筒を手にした郵便屋さんが「ぴーとぅっとぅ ひゅるるん」っと口笛を吹き、その音色をきいた川の中のやまめが、「たぴちゅん ぴてとん」とはね、そのきらめきを見た昼間の月はにっこりほほえんで、そのほほえみは夜の時間を過ごすみんなの心をそわそわさせて。
こんちゃんが心をこめて発信した気持ちが、少しずつみんなの心に伝わっていきます。その形は色々だけれど、理由は同じ。
「あんまり すてきだったから」
読者の心の中にも気持ちが届きはじめた頃、こんちゃんも知らない時間に小さな奇跡が起こります。……なんて素敵な夜なのでしょう!
注目の作家くどうれいんさんが出がける初めての絵本。くどうさんは最後に子どもたちに伝えます。「すきだと思ったら、すきだと言ってね」。なぜなら、ご自身が幼い頃に出した手紙の相手が、この作品の絵を描かれているみやざきひろかずさんだったのですから。一通の手紙から広がる「すてきな波紋」。みやざきさんの描く絵を通して、私たちにもしっかりと伝わってきます。
この気持ち、たくさんの人の心にも届きますように。なぜならもちろん、この絵本が「あんまりすてきだったから」。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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