ミリちゃんのおうちで暮らす黒猫の男の子、ヨル。夜空みたいな色のヨルが見上げると、ミリちゃんはいつも言います。
「お月さまそっくりの、大きな目!」
けれど、ヨルには何のことだかわかりません。ヨルは家の外に出たことがないのです。そんなある夜、ヨルは窓の外の壁にはさまっていたこネズミを助け出し、仲良くなります。ネズミはヨルに言うのです。
「夜って、まぶしくて、にぎやかで、おいしいもんだよ」
え、夜って真っ暗で、静かで、眠るものなんじゃないの? 首をかしげるヨルを連れて、ネズミは夜の街を案内してくれることになりました。ドキドキしながら後をついていくと、そこで出会ったのは大きな美しい月! にぎやかなレストラン!さらに……。
外に出たことのない黒猫と、家で暮らしたことのないネズミ。そんなふたりが一緒に過ごした時間はとっても特別なもの。だって、どちらも知らなかった夜に出会うことができたから。私たち人間が寝ている間に起きている、ほんのささいな、けれどとてもファンタジックで優しい出来事。
夜の街に浮かび上がるにぎやかな灯り、変装するヨルの愛らしさ、ふたりで過ごす穏やかな時間。静かだけれど何度でも読みたくなる、そんな魅力にあふれた絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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