ある晴れた日に生まれた小さな風の子、こかぜちゃん。
「わたし なにかぜなんだろう?」
神様は、生まれたばかりの風の子ひとりひとりに役割をあたえていきます。つむじかぜ、わかばかぜ、ビルかぜ、よかぜ……。ところが、こっくりこっくり眠っていたこかぜちゃんは、神様にあたえられた役割を忘れてしまいます。
あてもなく、ふわふわと風の仲間を探しているうちに出会ったうみかぜと一緒に海の上を走っていると、たくさんの風の子がふたりを追い抜いていきました。風の子どもだけが参加できるという春一番を決める大会に遭遇したのです。その夜、こかぜちゃんは考えます。そして決めるのです。
「わたし、はるいちばんに なりたい!」
憧れに向かって、ひたむきにがんばるこかぜちゃんの一年の様子を丁寧に描いたこのお話。自分の役割がはっきりとわからなかったからこそ、やっと見つけた大切な目標だったのでしょうね。最後まで走りきったからこそ、こかぜちゃんはちょっぴり悲しい気持ちになってしまいます。
けれど、読んでいる私たちは思うのです。「こかぜちゃんは、こかぜちゃん」だと。そこにいるだけで、すでに誰かを揺らす存在になっているはずなんだという作者のメッセージが、愛らしく軽やかに描かれた黒井健さんの絵によってしっかりと伝わってきます。
いねむりをするこかぜちゃんも、ひたすらに前に向かって走るこかぜちゃんも、誇らしげなこかぜちゃんも、魅力的! 子ども達の背中をそっと押してくれる優しい一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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