詩人の仕事は、生きる歓びをうたい
時代を先読みすることにあります。
宮沢賢治も金子光晴も茨木のり子も石垣りんも
そしてこの絵本の作者で詩人のロバート・フロスト
(1874-1963・アメリカ)もそうでした。
19世紀に生まれたフロストは、文明がついには
人間を破滅の淵に追いやることを予見し
この手紙形式の物語を書きました。
登場するのは、大地に立つ農夫と
文明の使者・自動車に乗る商人です。
フロストは農夫に「考える」という役割を与えます。
「考える」ことだけが文明を抑制し
人間を破滅に追いやらずにすむ
唯一の「手」であると考えたからです。
絵を描いたのはテッド・ランド。
フロストの物語を深く読んで絵画化し
原作にはない小鳥や馬、犬、猫、家族を
描くことで、物語をいっそう味わい深い
ものにしました。
山のなかの農家をめざして一台の黒塗りの乗用車が走ってきます。町の商人です。クリスマスツリーになる幼木を買いに来たのだと男は言います。
農夫が育てているのはバルサムモミの木で、断じてクリスマスツリーなんかにする木ではありません。
農夫は、友だちに手紙を書き、
自慢のバルサムモミの木を一本丸ごと絵に描いて送ってやりました。
「メリークリスマス
モミの木を一本、同封します。」
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