アフリカから奴隷として黒人がアメリカ大陸に連れてこられた。
どのように船で運ばれ、売られ、働かされたか。彼らの生活はどのようだったのか。それらを迫力のある絵と、魂に響く文章で表現した絵本。
絵本、というメディアの可能性に敬意を払い、多くの人に、特に若い世代に歴史の事実、人間の愚かさ、自分自身もこのような酷い状況になりうる可能性を訴えた作品。1998年、アメリカで発行されたが、この本は時代を越えて人に請求力を持ち続ける力がある。
人間がどこまでも残酷になり、愚かになり、自分勝手になれるかを、この絵本で知ることができる。これは、重い作品だから、読み進めるのも、絵だけを見続けるのも苦しい。しかし、直視しなければならない事実があったことを教えてくれる貴重な本だ。
NHKカルチャーラジオ(芸術)の放送で、ゴスペルシンガーの人が紹介してくださった絵本。これを子どもたちに教えた時、彼らは現実のものとして理解できなかった、という。
絵本だから作り物だと思った、自分たちと違う国や人種・外見だから関係ないと思った、歴史の理解が足らなかったから話の内容が理解できなかった…など、いろいろな理由で子どもたちは理解できなかったのかもしれない。
しかし、現在も残る人種差別や、人権問題を直視して欲しい。
日本では黒人や奴隷貿易というとあまりピンとこないかもしれないが、いじめや大勢の人と違った個性を持つ人を排除するなどの人権侵害は多々発生している。
この話は、自分も人間である以上、このように愚かで残酷なことをする側になる可能性もあり、また虐待される側に回る可能性もあるのだ、と訴え続けている。
とても真摯な態度で、控えめな表現ではあるが、直視し続けるのが難しい厳しさを感じた。
辛い話だが、勇気をもってページをめくって欲しい。