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戦争はきっととめられる
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投稿日:2026/08/16 |
世界中の、おそらく多くの人たちが、戦争はよくないと思っているだろう。
この世界から早く戦争がなくなればいいと願っていることだろう。
でも、実際は今でも世界のあちこちで戦争があって、いざこざが起こっている。
人類は進化してきたはずなのに、争いが絶えないのは、何故だろう。
『ぼくたちは、あらそうために生きるのか?』、この絵本のタイトルが胸にどんと響いてくる。
文を書いたのは、ゴリラ研究の第一人者である山極寿一さん、
絵を描いたのは動物絵本で多くのファンをもつあべ弘士さん。
なんとも贅沢なタッグだろう。
山極さんの文章は絵本の文というより、とても丁寧でやさしく書かれたエッセイのよう。
ゴリラの生態と人間の進化の過程を比較しながら、
人間は決して争いを好む動物ではないと説明してくれる。
人間には相手のことを知りたい、わかりたいという力があると、山極さんはいう。
だから、「あいての気持ちをわかろうとする共感の力が、ぼくたちヒトの本能であるかぎり、
いつかきっと、戦争のない世界をつくることができるはずだ。」
単に叙情に流されるのではなく、実に知的に構成された文章の力に打たれる。
そして、あべさんの絵も、そんな山極さんの文章を巧みに再現したものになっている。
戦争をしない。
戦争をとめる。
きっと、いつか人間ならできるはず。
山極さんとあべさんの強いメッセージだ。
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鎮魂の八月に読みたい絵本
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投稿日:2026/08/09 |
八月は鎮魂の月です。
お盆には亡くなった人たちの御霊を思い、
広島長崎と原爆によってたくさんの命が犠牲になり、
ようやくにして長い戦争が終わったのも、八月です。
なので、どうしても八月になると、戦争で犠牲になった人たちのことを思っていまいます。
映画やドラマ、あるいはドキュメントなどで戦争が取り上げられることも多い。
飯野和好さんの絵本『もんぐらかっつあんの歌』もそんな一冊です。
でも、飯野さんは声高に戦争やそのことで犠牲となった人たちを描いているわけではありません。
絵本に登場する「もんぐらかっつあん」は、飯野さんが子供の頃、
故郷埼玉県の長瀞町の駅前広場でよく見かけた不思議なおじさんのことです。
おじさんは町なかでゴミを拾い集めて、駅前のゴミ箱に捨てていきます。
子供たちが「おーい、もんぐらかっつあん」と呼びかけると、
いつもひょうきんなおどりでこたえてくれます。
おじさんは東京の人で、戦争で南の島に送られ、大変なめにあって帰ってきたといいます。
でも、帰ってきても、空襲で家も家族もなくなっていました。
おじさんはそれから放浪の旅に出たそうです。
「とにかく戦争はだめだ」
おじさんはいいます。
そんなおじさんが月夜の夜、川で魚たちと戯れる場面こそ、
いのちの賛歌といえます。
生きていることを全身で表現する、もんぐらかっつあん。
そのあとで、もんぐらかっつあんは長瀞の町からいなくなります。
不思議なおじさんのことを思いつつ、
飯野さんはこの絵本を祈るように描いたように思えてなりません。
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人生、まじめがいいですよ
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投稿日:2026/08/04 |
『星新一YAセレクション9』(理論社)。
表題作である「きつね小僧」をはじめとして、10篇の「ショートショート」が収められた、YAすなわちヤングアダルト向けの児童書。
ちなみに、「ヤングアダルト」は子供と大人の間の世代を指す言葉で、13歳頃から19歳頃までの若者のことをいいます。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
この巻に収録されている作品数はいつもより少ない。
というのも、ちょっと長めのショートショートが揃っているからだ。もっとも長いといっても、20ページほどの作品なのだが。
表題作「きつね小僧」は、もちろんあの江戸時代の強盗「ねずみ小僧」を元ネタにしている。あざやかな手口で金を盗み、しかも盗んだ金品が寄付されているというので、宝石商に勤める青年は興味津々。そんなある日、青年の前に現れた男がこう話す。「きつね小僧になりませんか?」。謎の「きつね小僧」にならないかというリクルート、というオチ。
「企業の秘密」という作品の主人公の男は、大企業に勤めているが、あまりパッとしない。星新一さんの作品には、こういうさえない男がたびたび登場する。さえないから、それをなんとかしようとするが、それが不幸(幸福?)のはじまり、というのがよくあるパターン。この作品では、この男が自分の会社の秘密をスパイすることを依頼され、秘密を暴くべく男はどんどん出世していく。男にそんな依頼をしたのは誰だったか。
若い読者の皆さん、人生コツコツでいきましょうね。
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パスタでバスタ(おなかいっぱい)
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投稿日:2026/08/02 |
普段何気なく「今夜はパスタにしようね」みたいに話すことがありますが、
「パスタ」というのはイタリア語の麺食品の総称で、
「うどん」といっても讃岐うどんもあれば稲庭うどんもあったり千差万別なように
「パスタ」もその種類は多種多様。
誰もが知っているといえば、スパゲッティとかマカロニですが、
実はその種類はなんと600以上あるというのですから、びっくりです。
そんな「パスタ」を絵本にしたのが『オイチーニ、パスタ!』。
文を書いたフェリーチェ・アレーナさんはオーストラリアの絵本作家で、
絵を描いたベアトリーチェ・チェロッキさんはローマ在住の絵描きさん。
そして、翻訳をしたのが、料理愛好家の平野レミさん。
平野さんといえば「シェフ料理」ならぬ「シュフ(主婦)料理」をモットーに
型破りな調理方法とその軽妙な語り口で多くの人に愛されている人気者。
この絵本、「パスタ」の名前が続々と出てきます。
マカローニ、リガトーニ、カネローニ、トルテリー二、カッペリーニ、ブカディーニみたいに。
そして、合間あいまに合いの手のように「オイチーニ」とか「ハラペーコ」といった、
イタリア語風の日本語ははいります。
そのテンポのよさといったら、なんだかテーブルをトン、トン、トトンみたいに叩きたくなります。
本を読みながら、テレビなどでみかける平野レミさんの口調を思い出すと、
より一層楽しいですよ。
絵本を読んだあとは「ねえ、今夜はパスタでいい?」になること間違いなし。
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ついに絵本作家にまでなっちゃった
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投稿日:2026/07/26 |
一人の人間が稼ぎだす経済効果がどれくらいなのかわかりませんが、
おそらくこの人がそれは日本の歴史上からいっても稀有な大きさではないでしょうか。
その人の名前は大谷翔平。
日本の野球少年が自身の夢を追いかけて海を渡っていく。
野球の本場アメリカのメジャーリーグで投手と打者の二刀流として大活躍。
大谷選手の活躍で、本場アメリカの野球場に多くの日本企業の看板が目立つようにもなりました。
大谷選手自身が多くのCMにも登場し、その名前を耳にしない日はないほど。
大谷選手とともに人気が高まったのが、大谷選手の愛犬デコピン。
その愛くるしい表情に大谷選手のファンだけでなく、多くの愛犬家もうっとりしているのではないでしょうか。
そんなデコピンが始球式に登場したことがあります。
2024年8月28日(日本時間29日)のドジャースタジアムでのこと。
その時の様子はニュース等の映像で流れましたから、見た人も多いと思います。
その時のデコピンの活躍を絵本にしたのが『デコピンのとくべつないちにち』。
作者はなんと大谷翔平選手!(マイケル・ブランクさんという人との共作です)
絵はファニー・リムという人が描いています。
面白いのが、大谷選手がちっとも似ていない(!)ということ。
きっと日本の絵本作家さんなら、ひとめで大谷選手とわかるように描くでしょうが、
そうでないところが案外この絵本を大谷選手に限らない、広く楽しめる作品にしているといえます。
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メロンもスイカもくだものでいいじゃない
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投稿日:2026/07/21 |
夏のくだものといえば、スイカ。
ところが、俳句の世界ではスイカ(西瓜)は秋の季語。
「冷やされて西瓜いよいよまんまるし」(伊藤通明)
ややこしい。
同じように、スイカは実際にはくだものではない。
正しくはやさい。
『歳時記』にも「ウリ科の蔓性一年草である西瓜の実」とある。
ややこしい。
メロンもおなじ。こちらもやさい。
よくいわれるのは、木にできる果実がくだもので、田畑でできる果実がやさい。
ややこしい。
植物画や生物画で実に丁寧な絵を描く金内織恵さんの初めての絵本『くだものらららん』(2025年4月刊行)には、
そんなややこしいスイカもメロンも、リンゴやミカンやバナナとともに登場する。
つまりはくだものとしての扱いで、それがちっとも違和感がない。
だって、スイカもメロンもお店ではくだものとして売っていたりするのだから。
肝心なことは、甘くておいしくて、「らららん」と心が弾むようになること。
金内さんの絵はくだものそのものだけでなく、木の枝にどのように実がなっているか、
メロンやスイカはどのような葉が茂っているか、
そんな収穫前の姿も丁寧に描かれている。
それらが「ずっしり どっしり」や「にょきにょき ぎっしり」といった
子供たちにも親しまれるオノマトペと心地よいリズムで綴られていく。
絵本を読んだあとは、おいしいスイカを食べたくなるにちがいない。
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どうしておばあちゃんは「ベッシー」なの?
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投稿日:2026/07/05 |
人は時に自分のルーツを知りたくなる。
絵本作家石川えりこさんの『ベッシーちゃん』を読んで、そう思った。
タイトルにもなっている「ベッシーちゃん」は石川さんがモデルだろう、幼いともなおちゃんのおばあちゃんの名前。
おばあちゃんには「ふじ」という名前があるが、別に「ベッシー」という名前も持っている。
その理由は、おばあちゃんはカナダのバンクーバーで生まれたから。
おばあちゃんの両親はカナダのバンクーバーへ仕事を求めて日本を出た。
その地でおばあちゃんは生まれたのだ。
そこで楽しい子供時代を過ごしたおばあちゃんだったが、戦争が始まって日本に戻ることになった。
それ以来、バンクーバーに戻ることはなかった。
石川さんは小さい頃おばあちゃんからバンクーバーで生まれたことを聞いていて、
亡くなったあとその町を実際訪れてみて、そこで過ごしたおばあちゃんのことを知りたいと思うようになった。
調べていくと、おばあちゃんが過ごした町が素敵な佇まいであったことなどもわかってくる。
絵本でそんな子供時代のおばあちゃんを描くことで、おばあちゃんの切なさに気づかされたという石川さん。
「ベッシーちゃん」と呼ばれていた頃のおばあちゃんの子供時代をあざやかに再現しているのは、
いつもながらの石川えりこさんのほのぼのとした絵の魅力だろう。
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ヤングアダルト向けにこんな作品もあります
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投稿日:2026/07/01 |
『星新一YAセレクション8』(理論社)。
表題作である「不吉な地点」をはじめとして、12篇の「ショートショート」が収められた、YAすなわちヤングアダルト向けの児童書。
ちなみに、「ヤングアダルト」は子供と大人の間の世代を指す言葉で、13歳頃から19歳頃までの若者のことをいいます。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
「ヤングアダルト」向けとなっているだけあって、こんな作品も星さんは書いていたのかと少し驚いたのが、この巻に収められている「一家心中」。
部屋の中でやせた小柄な男が「もうだめだ」と嘆いている。そばで妻が「なんとかならないの」と聞く。しかし、男は死ぬつもり。しかも、妻も子供たちも一緒に。
男の仕事は宣伝に関すること、妻は言う。「宣伝をしただけなのに」。
夫婦の会話で進んでいく物語、一体この男は何者?
その答えは最後の一行でわかる。男はナチの宣伝大臣ゲッペルス。
ヒットラーの死後、そのあとを追うように妻と六人の子供らとともに一家心中したゲッペルスの最後のありさまを、たった数ページのショートショートで描いてみせる力量には驚くし、若い読者がこの作品をきっかけに歴史の事実をさぐってみるきっかけになるかもしれない。
この巻では「背中の音」や「逃亡の部屋」といった割と長めの作品もある。
長い分だけ、物語に二転三転ひねりが加わっている。
これらの作品も「ヤングアダルト」向けといえる。
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この夏の課題図書の一冊
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投稿日:2026/06/28 |
この『ララのまほうのことば』は、
第72回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」小学校低学年の部に選ばれた一冊。
書いたのはグレーシー・ジャンというアメリカの絵本作家で、2021年にこの作品で絵本デビュー。
翌年には優れた新人作家に贈られるエズラ・ジャック・キーツ賞(イラストレーター部門)を受賞。
日本での翻訳(訳者はやのあやこさん)は2025年で、
第31回いたばし国際絵本翻訳大賞(英語部門)最優秀翻訳大賞を受賞している。
今回「課題図書」に選ばれた理由として「色の使い方がよく考えられている絵本」の評価が高い。
「太陽の色と主人公の女の子の生命力の表現など、ひきこまれる。」とある。
この絵本では主人公のララの洋服だけが黄色く彩色されているが、
まわりのほとんどが、ママも部屋も町も、黒で描かれている。
色でいえば、ララが町の空き地で見つけた草と葉っぱも緑で色付けされていて、
ララと植物だけが暑い町中で元気がいいのがわかる。
でも、ママは毎日どろんこになるララを叱ってばかり。
ついには、外出禁止を申し渡すことに。
ところが、ララが可愛がった草や葉がぐんぐん大きくなって、
暑い町に覆うように大きな日陰ができて町に活気がもどるようになる。
最後のページは黄色い光に満ちた町の風景。
でも、この絵本でとても大切なことは、ララが草や葉っぱにかけてこんな言葉たち。
「こんにちは。みどりのおともだち」
「とびきりとくべつすてきなこ」
「だい、だい、だいすき」
この絵本を読んで、子どもたちがどんな言葉を綴るのだろう。
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課題図書になったこの本で「難民」について考えてみよう
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投稿日:2026/06/23 |
6月20日が「世界難民の日」だということをニュースで初めて知りました。
この日は「紛争や迫害から逃れることを余儀なくされた人々の勇気を称え、保護と支援への関心を高める日」で、
2000年の国連総会で定められたそうです。
第72回青少年読書感想文全国コンクール「課題図書」小学校高学年の部に選定された『ミシュカ』は、
アフガニスタンからの難民としてオランダに逃げてきた少女ロヤと家族の物語です。
課題図書に選ばれた理由に、こう書かれています。
「丁寧な叙述から、国を追われるという苦難を背負う人々が世界にいることに気づかせてくれる」と。
しかし、『ミシュカ』は暗い物語ではありません。
「ミシュカ」というのはロヤたち家族が飼いだしたペットのうさぎの名前。
ある日、このうさぎが逃げ出して大騒ぎになります。
そんな騒動を描きつつ、家族のきずな、きょうだいの愛情、などが描かれています。
そして、そんな暖かい物語の中に、難民としての悲しさ苦しさもきちんと伝わるようになっています。
家族がアフガニスタンから脱出した時、ロヤはまだ3歳の時。
だから、オランダにたどりつくまでの困難さはよく覚えていません。
9歳になった今、3人のお兄さんたちの話を聞くことで、ようやく知ることができるようになりました。
「身の危険を感じて、住んでた国から逃げ出すような旅は、旅行って呼ばないで『避難』って呼ぶの。
そして避難する人たちは、旅行者じゃなくて『難民』って呼ばれるんだよ」
9歳のロヤがいかにしっかりした少女かがわかります。
アフガニスタンの難民だったアヌッシュ・エルマンの話を聞き、
エドワルト・ファン・デ・フェンデルが書いた『ミシュカ』という物語に、
子どもたちはどんな感想を綴るのだろうか。
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