「おうちのなかの せまーい すきまを のぞいてみると、そこにいるのは……すきまっこちゃん」
もうこの冒頭で心をつかまれてしまいます。
だって……そうそう、あるある。
隙間にころころ転がっていったまま、わからなくなった小さい物たち。
がびょうっこや、どんぐりっこ、あめっこ、ちびえんぴつっこ。
キャメルっこに、ビーだまっこに、ブロックっこに……。
みーんな隙間に落ちた、すきまっこちゃん!
もともとは、そのへんにある、ただのどんぐりやあめだったのに、家具の隙間に落ちて忘れられているうちに、ふしぎ、目や口や手足ができて動けるようになっちゃったんです。
そんなすきまっこちゃんたちは、おうちの中で、仲良くこっそり暮らしているんですって。
ある日、こんぺいとうちゃんがありたちにさらわれる事件が発生……!
クッキーっこ、ちびえんぴつっこ、ビーだまっこが探しにいきますが、甘いもの好きなありに、クッキーっこはかじられそうになってしまいます。
さあ、どうしたらいいのでしょう。
すきまっこたちは、こんぺいとうちゃんを救出するべく、会議を開きます。
そこで出てきた、びっくりのアイディアは……!?
まるですきまっこたちの傍らにしゃがんでいるような目線で、緑の地面や、ありの巣の中の世界を味わえます。
のびやかなタッチと美しい色、そして「ころりん すとん」「ふしぎ ふしぎ」と言葉のひびきも素敵なんです。
すきまっこたちの、かわいく、けなげな奮闘に、心があたたかくなります。
実は、作者・竹与井かこさんは、笹井信吾さんと畑中宝子さんによるユニット。
『トイレさん』(佼成出版社)、『れいぞうこからとーって!』『スプーンコプター』(共にアリス館)などの絵本を出版しています。
生き物ならぬ“物”をユニークな視点で描き、あたたかで個性あふれる作品世界を展開する、今後が楽しみな作家さんです。
本書も子どもたちの大切な1冊になるはず。
そうそう、読んだらきっと、親子で“わが家のすきまっこちゃん”を探したくなりますよ!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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