レーナとヒキガエルの紳士
- 絵:
- ジュリア サルダ
- 訳:
- 河野 万里子
- 出版社:
- 徳間書店
絵本紹介
2025.06.19
雨の季節になるとひときわ、輝いて見えるのがカエル。ふだんはどこで何をしているのか、雨が降り始めるといつのまにか姿を現し、雨に打たれてもびくともせず大合唱。孤高なようで、ぴょんぴょん跳ねるその動きは愛嬌たっぷり。まさに絵本の主人公にふさわしい存在です。
カエルが活躍する絵本はいーっぱい!
『かえるのほんや』に続くシリーズ第2弾『かえるのほんや 3びきのみならい』は、本屋の仕事に一生懸命邁進する3匹のおはなし。本屋とかえるという異色の組み合わせながら、やぎたみこさんの描く精緻な世界観にすっかり魅了されます。
同じカエルとしてお互いの存在を意識しつつ話しかけることのできないアマガエルとウシガエル。内田麟太郎さん・黒井健さんコンビによる『ともだちともる』は、友だちとの距離感をやさしく見つめた一冊です。
『宮沢賢治の絵本 蛙のゴム靴』は、味わい深い会話や松成真理子さんのみずみずしい水彩画が賢治の残した蛙たちの世界を想起させてくれます。
ケーロケロケロ……鳴き声のする草むらや池をのぞいてみれば、ひょっこり顔を出したカエルに出会えるかもしれません。雨の日の散歩も、なんだか楽しくなりそうです。
出版社からの内容紹介
世界で活躍する人気イラストレーター、
ジュリア・サルダの絵本
西のはてに奇妙な森があった。
町の人たちは
「あの森にはなにかいる。
森には目がある。耳もある」とうわさをした。
森から二度ともどらない人もいた。
でも、町の人は森にたきぎや木の実を
とりにいった。
森と町のあいだには、川が流れていた。
町でただひとり、舟を持つ物静かな少女レーナが、
渡し守をしていた。
ある日、レーナがひそかに思いを寄せる
青年オーレンが、森からもどらなかった。
数日後、嵐のなか、現れたのは
奇妙なヒキガエル。
「森の主(あるじ)」と名乗るそのヒキガエルに、
レーナは森の奥の家へ招待される。
このヒキガエルなら、オーレンのことを
何か知っているかもしれない。
レーナはヒキガエルについていく。
ところが、ヒキガエルが「見てはならない」という部屋をのぞいたレーナが見たものは…?
ちょっぴりこわい昔話風の物語に、
世界で人気をほこるイラストレーター、
ジュリア・サルダが絵を添えました。
美しい絵とともに物語を堪能できる、
子どもから大人までひきこまれる絵本。
この書籍を作った人
翻訳家。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。訳書としてサン=テグジュペリ『星の王子さま』、サガン『悲しみよ こんにちは』(以上、新潮社)、セプルベダ『カモメに飛ぶことを教えた猫』(以上、白水社)、絵本翻訳に『だいすきっていいたくて』のシリーズ(ほるぷ出版)、『ジェーンとキツネとわたし』『ちいさなあなたがねむる夜』(以上、西村書店)など多数。東京都在住。
この書籍を作った人
1941年福岡県大牟田市生まれ。個性的な文体で独自の世界を展開。『さかさまライオン』(童心社)で絵本にっぽん大賞、『うそつきのつき』(文渓堂)で小学館児童出版文化賞、『がたごと がたごと』(童心社)で日本絵本賞を受賞。絵本の他にも、読み物、詩集など作品多数。他の主な作品に「おれたち、ともだち!」シリーズ(偕成社)、『かあさんのこころ』(佼成出版社)、『とってもいいこと』(クレヨンハウス)、『ぽんぽん』(鈴木出版)などがある。
この書籍を作った人
1947年新潟県生まれ。新潟大学教育学部中等美術科卒業。児童出版美術家連盟会員。主な作品に『ゆきのひのころわん』他ころわんシリーズ(ひさかたチャイルド刊)『手ぶくろを買いに』『ごんぎつね』(偕成社)『おかあさんの目』(あかね書房)他多数の作品がある。
みどころ
「きょうから みならいとして はたらく あたらしい なかまだよ。」
そう店長に紹介されたのは、ダルマくん、アマくん、トノサマくんの、3びきのかえる。ここはかえるの本屋です。このお店にある本は、全部かえるたちが作っています。3びきは見習いとして、売り場のお手伝い、本の材料づくり、そして3びきで1冊の本づくりをすることになりました。
先輩に教えてもらいながらお客さんに売り場を案内したり、初めての紙づくりに奮闘したり、からだじゅうを絵の具だらけにしながら色をつくったり。大変そうだけど、なんだか楽しそう!
そうしていよいよ本づくりです。でも、どんな本をつくろうか、そんなに簡単には思いつきません。その時、窓の外から何かがのぞきこんでいて……?
前作『かえるのほんや』に続くシリーズ第2弾。今回も緻密に描かれた本屋の様子は見ごたえたっぷり! さらに試行錯誤しながら本をつくっていく見習いの3びきの様子にも目が離せなくなります。仕事の難しさや面白さがしっかりと伝わってくるので、思わず一緒にアイデアを考えだす子もいるかもしれませんよね。
本を楽しむところから、本をつくりだすところまで。「本のある生活っていいよね」という作者のやぎたみこさんの思いに共感。巻末にはかえる文字の一覧表もあるので、一冊まるごと、すみからすみまで味わってみることにしましょう。
この書籍を作った人
兵庫県生まれ。武蔵野美術短期大学卒。イラストレーターのかたわら絵本を学び、第27回講談社絵本新人賞佳作を受賞。「大人もいっしょに楽しめる、子どものための絵本」の制作をつづけている。絵本の作品に『くうたん』(講談社)、『もぐてんさん』(岩崎書店)がある。夫・娘・息子・亀・犬とともに千葉県松戸市在住。
この書籍を作った人
1896年岩手県花巻市に生まれる。盛岡高等農林学校農芸化学科卒業。十代の頃から短歌を書き始め、その後、農業研究家、農村指導者として活動しつつ文芸の道を志ざし、詩・童話へとその領域を広げながら創作を続けた。生前に刊行された詩集に『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』がある。彼の作品の殆どは没後に高く評価され多数の作品が刊行された。また、何度も全集が刊行された。1933年に37歳で病没。主な作品に『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』『ポラーノの広場』『注文の多い料理店』『どんぐりと山猫』『よだかの星』『雪渡り』『やまなし』『セロひきのゴーシュ』他多数。
この書籍を作った人
1959年生まれ。大阪府出身。イラストレーター、絵本作家。『まいごのどんぐり』(童心社)で児童文芸新人賞受賞。紙芝居『うぐいすのホー』(童心社)で第43回五山賞奨励賞受賞。『じいじのさくら山』(白泉社)などの作品の評価も高く、読者、専門家の注目を集めている。ほかに『こいぬのこん』(学研)、『くまとクマ』(童心社)、『ぼくのくつ』(ひさかたチャイルド)などの作品がある。
この書籍を作った人
1933年アメリカ ロサンゼルス生まれ。高校卒業後ブルックリンの「プラット・インスティテュート」に入学。本のイラストレーションを学ぶ。ポーランド生まれのアニタ・ローベルと出会い結婚。『わたしの庭のバラの花』など、ローベルが文、アニタが作画を担当した絵本も出版されている。『ふたりはともだち』でコルデコット賞次賞と全米図書賞、『ふたりはいっしょ』でニューベリー賞、『どうぶつものがたり』でコルデコット賞を受賞。20世紀アメリカを代表する絵本作家となる。その他の作品に『ふくろうくん』『おはなしばんざい』(以上文化出版局刊)などがある。1987年ニューヨークの病院で他界。
この書籍を作った人
東京都生まれ。詩集『わがキディ・ランド』で高見順賞、『鶸』で芥川賞、童話『ぽたぽた』で野間児童文芸賞、『イヌのヒロシ』で路傍の石文学賞、評伝『北原白秋』で毎日芸術賞など受賞。他の児童向けの本に『おおやさんはねこ』『星のカンタータ』『ほろびた国の旅』『イトウくん』など、翻訳にアーノルド・ローベル『ふたりはいっしょ』などがある。
文/竹原雅子 編集/木村春子