たんぼのにんじゃ あまがえる
- 作:
- 谷本 雄治
- 絵:
- サトウ マサノリ
- 出版社:
- 文溪堂
絵本紹介
2023.05.17
絵本にはさまざまな生きものが登場したり、主役になったりします。中でも雨の季節になると気になるのが、カエルやカタツムリ。なんでこんなに“雨”のイメージが強いのでしょう。
静かに耳を澄ますと聞こえてくるのは、しとしと降る雨音と、ケロケロケロ……じっと一点を見据えるカエルの声。傘の下、ふと道脇の葉っぱに視線を落とすと、身を打つ雨も気にせずに留まるカタツムリ。個人的にはそんないつかの雨の日に出会ったシーンがふと浮かんでくるのですが、みなさんはいかがですか?
ちょっと調べてみたところ……カエルやカタツムリは皮膚呼吸で体に取り入れる酸素を補っているので、皮膚が乾くと死んでしまうのだそう。雨の日は、湿り気たっぷりでカエルやカタツムリにとって格好の外出日和。雨の日や梅雨時期に彼らをよく見かけるのは、理に叶っていたんですね。
今回はカエル、カタツムリが登場する絵本を集めてみました。 雨を象徴するキャラクターとして活躍するおはなしから、どこかたくましかったり物憂げだったり、リアルな生態に迫った絵本まで、さまざまな表情のカエルやカタツムリたちと出会えると思います。彼らと出会うことの多い雨の季節にぜひ、お楽しみくださいね。
みどころ
「まちの はずれの ねぼすけたんぼ
みずが はいって、めを さまし、
たうえの きせつを しりました。」
胸の中が、すうーっと爽やかに土の香りで満たされるような、春の田んぼ。そんな風景をひっそりとうかがう、ちいさな影がありました──。
カワイイからってナメちゃいかんぜ! 壁に張り付き意表をついて、体の色を変えて隠れて……? その姿、まるで忍者!? サトウマサノリさんの作画と、谷本雄治さんの文章でつづられる、身近な生命の生き様をダイナミックに切り取ったシリーズ。カブトムシ、クワガタ、オニヤンマときて、こんどのテーマはアマガエル!
「たうえの あとは、うたがっせん。
のどを おおきく ふくらませ、じまんの うたを きかせます。」
「あたまを さげて、おしりを あげて、
ぽろぽろ、ぽろり、ぽろ ぽろ ぽろり。
まあるい たまごを うみました。」
読み聞かせにもピッタリ! 歌のようにリズミカルな文章で、生き生きとアマガエルの生態を描き出します。カエルいろいろ、オタマジャクシもいろいろ。カエルの種類によって、オタマジャクシもぜんぜん顔がちがう!? 今日からぼくもオトナのカエル。でも、前足はいつも左側から生えてくるってホント!?
カエルの中では特に身近に感じるアマガエルですが、その生態にも知らないことがまだまだこんなにたくさんあるんだなあと、おどろかされました。
そんな彼らが立派なオトナのカエルになるまでを追ったイラストも、迫力満点!
弱々しいオタマジャクシを狙う、凶暴な水中の虫たち。アマガエルの忍術をものともせずに襲いかかってくる、ヘビやクモ。特にみどころな一枚は、草にしがみついて隠れる、1匹の小さなアマガエルを描いた緊張感あふれる1ページ! そのすぐ近くには、鋭く、ながーいクチバシが、獲物を探しています……
ちいさく、まるい体で懸命に生きるアマガエルの、かわいくもたくましい姿を描いた生命力あふれる一冊です。
この書籍を作った人
みどころ
自然や動物達への深い愛情を感じる、あたたかなタッチの絵が魅力のどいかやさん。
「かえるのピータン」でも、可愛らしいかえるやおたまじゃくしや、小さなお池の様子などにうっとり。
でも今回のお話、何だか大人になった自分が読むと、
ちょっと立ち止まってしまう「何か」があるんです。
それは、二匹の主人公、「かえるのピータン」と「つばめのパーチク」の
それぞれの生き方の違い。
いつも新しいもの、珍しいものを求めて世界中を飛び回っているパーチク。
それに対して、ピータンは愛するものに囲まれて、一つ所に腰を落ち着けて季節の移り変わりなどを楽しむ生活。
かつての自分は、どちらにも憧れた覚えがあります。
でも、生きる喜びや幸せを見つける事が上手・・・という点に於いて、二匹は同じ。
年を重ねていくにつれ、それぞれの喜びも少しずつ知っていき、
この絵本の読み方も変わってくるんだろうなぁ、としみじみ。
そして、それぞれの人生の素晴らしさを称え合うようなこの内容、
読み終わった後も、とても気持ちが良いのです。
この書籍を作った人
1969年、東京都生まれ。東京造形大学デザイン科卒業。絵本の作品に『パンちゃんのおさんぽ』『いたずらコヨーテキュウ』『やまねのネンネ』(BL出版)、『みけねこキャラコ』『こねこのポカリナ』『おはなのすきなトラリーヌ』『トラリーヌとあおむしさん』『ふゆのひのトラリーヌ』(偕成社)、『チップとチョコのおでかけ』『チップとチョコのおつかい』『チップとチョコのおるすばん』(文溪堂)、『くりちゃんとひまわりのたね』『くりちゃんとピーとナーとツー』(ポプラ社)、『チリとチリリ』『チリとチリリ うみのおはなし』『チリとチリリ まちのおはなし』(アリス館)、『ねずみちゃんとりすちゃん おしゃべりの巻』(学習研究社)、『カロンとコロン はるなつあきふゆ4つのおはなし』(主婦と生活社)、『ねこのかあさんのあさごはん』(小学館)など多数。千葉県在住。
みどころ
その本屋があるのは、町のはずれの古い本屋の裏庭とつながっている森の、池のほとりのやなぎの木の根元。葉っぱにかくされた入り口を入っていくと、そこにいるのは……たくさんのかえるたち! そう、そこは「かえるのほんや」なのです。
「かえるが本を読むの?」
いえいえ、そんなことで驚いている場合じゃありません。だって、この本屋で人気のある絵本は、みんなこのお店でつくっているんです。紙、絵の具、のりだって手作り。さらにお話だってここにいる作家たちが考えているのです。でも、今日はおはなしづくりが行き詰まっている様子。そんな時は草のハンモックで昼寝が一番。ところが……?
「ぼくたちって ほんとに すごい かえるじゃない?」
本当に、本当にそう思いますよ。かえるたちが最初から最後までずっと大活躍する様子は、何度読んでも飽きることがありません。かえるたちへの深い愛情を感じる作者やぎたみこさんの絵も素晴らしく、子どもたちはきっとかえるが好きになってしまうでしょう。
「ほんやが あって よかったな。」
深く深くうなずきながら、そっと絵本をとじるのです。
この書籍を作った人
兵庫県生まれ。武蔵野美術短期大学卒。イラストレーターのかたわら絵本を学び、第27回講談社絵本新人賞佳作を受賞。「大人もいっしょに楽しめる、子どものための絵本」の制作をつづけている。絵本の作品に『くうたん』(講談社)、『もぐてんさん』(岩崎書店)がある。夫・娘・息子・亀・犬とともに千葉県松戸市在住。
この書籍を作った人
(戸田幸四郎 1931年−2011年)山形県尾花沢市生まれ。都市計画から店舗デザイン、グラフィックまであらゆるデザインを仕事とする。51歳の時、デザイナーから絵本作家に転向。80歳で亡くなるまで42作品を発表。そのどれもがロングセラーとなる。絵はもちろん、ひらがなまで全てをデザインした『あいうえおえほん』は累計100万部を超え、日本の知育絵本の草分けと評されている。他にも宮沢賢治・太宰治などの文に重厚な絵を描いた名作絵本集や環境をテーマにした創作絵本集など出版。静岡県熱海市には自身が建築デザインから手がけた戸田幸四郎絵本美術館がある。
この書籍を作った人
Makoto Ueda 1973年静岡生まれ。画家。『イラストレーション』誌「ザ・チョイス」1998年度・大賞受賞。『マーガレットとクリスマスのおくりもの』(あかね書房)で日本絵本賞を受賞。絵本、装画、挿絵、CDジャケット、広告の仕事など、幅広く活躍している。自作の絵本に『スケッチブック』(ゴブリン書房)』、『まじょのデイジー』(のら書店)、『おやすみのあお』(佼成出版社)、『ぼくはかわです』(WAVE出版)、挿絵に『雨ふりマウス』(竹下文子・文 アリス館)『絵描きの植田さん』(いしいしんじ・作 ポプラ社)『わたしのおじさん』(湯本香樹実・著 偕成社)『りゅうの目のなみだ』(浜田廣介・作 集英社)『トトンぎつね』(今江祥智・文 フェリシモ出版)、『えのないえほん』(作・斉藤倫 講談社)など。装画に『号泣する準備はできていた』(江國香織・著 新潮社)などがある。
この書籍を作った人
山口県生まれ。詩人、絵本作家。詩情あふれる独自の視点で多彩な作品を創作。言葉遊びの達人でもある。詩のボクシング全国チャンピオン。サンリオ詩とメルヘン特別賞などを受賞。絵本『ひだまり』(光村教育図書)で産経児童出版文化賞産経新聞社賞、『みどりのほし』(童心社)で児童ペン賞絵本賞を受賞。詩集、絵本、翻訳、作詞など作品多数。
この書籍を作った人
1972年大分県に生まれる。筑波大学芸術専門学群視覚伝達デザイン科卒業。2004年、第5回ピンポイント絵本コンペで優秀賞を受賞。受賞作をもとにつくった『えんふねにのって』(ビリケン出版)でデビュー。作品に『ぼくのかえりみち』『いま、なんさい?』『えんふねにのって』(BL出版)『ぼくひこうき』(ゴブリン書房)『ユキコちゃんのしかえし』(偕成社)『おむかえ』(佼成出版社)など多数。挿絵に『だんまりうさぎとおしゃべりうさぎ』(偕成社)『魔女ののろいアメ』(PHP研究所 )など。翻訳書に『ニブルとたいせつなきのみ』(ビリケン出版)がある。
この書籍を作った人
1913年現在の愛知県半田市生まれ。東京外国語学校卒業。1943年結核により29歳の若さで亡くなる。『ごんぎつね』『てぶくろをかいに』『でんでんむしのかなしみ』『おじいさんのランプ』などの作品がある。
文:竹原雅子 編集:木村春子