ひみつの森のオオカミ
- 絵:
- ジュリア・サルダ
- 訳:
- 河野 万里子
- 出版社:
- 徳間書店
絵本紹介
2026.08.19
読書感想文に苦戦する子が増える中学年から高学年、本選びではどんなことを意識するといいのでしょうか。心が大きく育つこの時期は、学校生活や友だち関係、家族など、共感するテーマやできごとが描かれた作品がおすすめ。自分自身の体験と、物語や主人公を重ねてみることで、感想はぐんと豊かに広がります。
今記事では中学年・高学年に手にとってほしい作品をご紹介します!
ある夜、小学5年生の女の子、天部瑠璃は、幼なじみと高台の公園へ流星群を見に行くことに。そこに不思議な七色の光が現れて……『宇宙人マートと過ごした夏休み』は今、まさに過ごしている夏休み、見える景色の色が変わるような元気の出る物語。 文字が書けないまま大人になった西畑保さん、64歳の挑戦は夜間中学で「あいうえお」から踏み出す一歩。『読み書きを覚えたい! 64歳で夜間中学に』は映画化でも話題となった実話、「何のために勉強するのか」を問いかけます。
ほかにも宮沢賢治の名作や、ノーベル文学賞作家ハン・ガンによる希望の物語、10代の体にまつわる本などをピックアップ。まずは気になる一冊を開いてみてください。
出版社からの内容紹介
世界で人気のイラストレーター
ジュリア・サルダの絵本
はるかかなた、北の森に、
おそろしい巨大なオオカミが
すんでいた。
オオカミには、ひみつがあった。
森の真ん中の小屋にすむ若い娘の歌に、
心ひかれていたのだ。
娘は寝たきりの父親の看病をしていたが、
ある朝、父がなくなり、
悲しみにくれる娘は、歌をうたわなくなった。
娘の歌を聞けなくなったオオカミは、
心が苦しくてたまらない。
ところがある日、
命をたすけたウサギの指南で、
オオカミは娘とついに
言葉を交わせるようになる。
そしてオオカミの心は
みたされていったが、
エサを口にすることもなくなった。
ついにオオカミは倒れ…?
アート色の豊かな
ジュリア・サルダの絵による、
昔話風の物語。
産経児童出版文化賞翻訳作品賞を受賞した
『レーナとヒキガエルの紳士』の姉妹本。
この書籍を作った人
翻訳家。上智大学外国語学部フランス語学科卒業。訳書としてサン=テグジュペリ『星の王子さま』、サガン『悲しみよ こんにちは』(以上、新潮社)、セプルベダ『カモメに飛ぶことを教えた猫』(以上、白水社)、絵本翻訳に『だいすきっていいたくて』のシリーズ(ほるぷ出版)、『ジェーンとキツネとわたし』『ちいさなあなたがねむる夜』(以上、西村書店)など多数。東京都在住。
みどころ
おまつりの夜、少年ジョバンニがひとり町のはずれでどこからともなく聞いたのは、汽車の音と「銀河ステーション」というふしぎな声。気がつくと目の前には親友カムパネルラが座っており、ふたりは一緒に小さなその鉄道にのっていたのです。
銀河をかけぬけていくその列車、ふたりの少年はどこへ向かっているのでしょう。幻想的な景色や出来事を目にしながら、ジョバンニは幸せについて、生きる事について考えるのです。やがて、そこらが一ぺんにまっくらになったかと思うと・・・。
宮沢賢治の作品といえば、誰もが最初に思い浮かべるであろう名作「銀河鉄道の夜」。
たくさんの人が読み、たくさんのイメージが生まれ続けているこの童話ですが、また新たな世界を見せてくれる傑作絵本が誕生しました。
独特の世界観で描かれたこの童話に小学生の時に出会い、以来十代の終わり頃から50年の時をかけて「銀河鉄道の夜」のビジュアル化を目指して制作を続けられたというのは金井一郎さん。
絵本を開くと広がっているのは、見た事のないような表現。その不思議な世界は幻想的であり、銀河を想像させてくれます。まさに現実と空想、生と死のはざまを表しているかのようです。
「翳り絵」と呼ぶその手法は穴をあけた黒いラシャ紙から浮かびあがる光の粒の集積によって表現されたもの。
宮沢賢治のこの物語が、こんなに奥深く美しい世界を生み出してしまうのだから、やはり驚いてしまいます。初めて出会う子どもたちも、何度も読んできた大人も、じっくりと味わい読み込んでもらいたい1冊です。
この書籍を作った人
1896年岩手県花巻市に生まれる。盛岡高等農林学校農芸化学科卒業。十代の頃から短歌を書き始め、その後、農業研究家、農村指導者として活動しつつ文芸の道を志ざし、詩・童話へとその領域を広げながら創作を続けた。生前に刊行された詩集に『春と修羅』、童話集『注文の多い料理店』がある。彼の作品の殆どは没後に高く評価され多数の作品が刊行された。また、何度も全集が刊行された。1933年に37歳で病没。主な作品に『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』『ポラーノの広場』『注文の多い料理店』『どんぐりと山猫』『よだかの星』『雪渡り』『やまなし』『セロひきのゴーシュ』他多数。
出版社からの内容紹介
何のために勉強するのか?
『読み書きを覚えたい!〜64歳で夜間中学に〜』
子どもたちにこそ読んでほしい──
映画化でも話題の実話、著者の長年の取材により、児童書で刊行!
文字が書けないままおとなになった西畑保さんは、六十四歳で夜間中学に通い始めます。
「あいうえお」からの小さな一歩。
その先にあるのは、大切な人へ思いを伝える一通の手紙です。
うまく書けず、何度もまちがえながらも、あきらめません。
気持ちは伝わるのでしょうか。
はじめての挑戦が、いま始まります。
<もくじ>
はじめに
第一章 決心 夜間中学に入学/年賀状/名前が書けた日
第二章 広がる夢 新聞/金賞/三十五年目のラブレター
第三章 子ども時代 和歌山県で生まれる/学校でのいじめ/母の死
第四章 苦労の連続 食堂で働く/買い出し/飲食店を転々と/寿司屋に就職
第五章 運命の出会い 二通目のラブレター/お見合い/トイレにかくれる/秘密が……
第六章 挑戦したものの ノートとえんぴつ/包帯作成/子どもの成長
第七章 変かわらない情熱 最後のラブレター/届かなかったラブレター/卒業
解説 春日中学校夜間学級元教頭 深澤吉隆先生
あとがき
みどころ
ある村に「涙つぼ」と呼ばれている子どもがいました。ある日、その子のもとへ、頭のてっぺんからつま先まで真っ黒なおじさんがやってきます。おじさんは「私は涙を集める人なんだ」と名乗り、大きな黒いカバンを開いて見せます。その中には黒いシルクの布に包まれた箱があり、大きさも形も様々な涙が宝石のように並んでいました。
「オレンジがかったこの涙は、とても腹が立ったときに流す涙……、灰色がかったこっちの涙は、嘘で流す涙……、薄紫色の涙は間違いを後悔したときに流す涙……」
他にも、濃い紫色の涙、赤黒い涙、ピンク色の涙……とたくさんの涙を持っているおじさん。しかし、このどれでもない、世界で最も美しい「純粋な涙」を探していて、その涙を「涙つぼ」とずっとからかわれてきた子どもが持っているのではないかと言います。その後おじさんの道連れである「青い明け方の鳥」に導かれて、子どもはおじさんが向かう目的地まで一緒に旅をすることに。旅を通して、おじさんが見せてくれたもの、出会わせてくれたものは、子どもにどんな変化をもたらしていくのでしょうか。
本作の魅力は数え切れないほどあります。
私たちが何気なく流している涙にこんなにも様々な種類があるというその豊かさに気づかせてくれること。
涙の色や自然の描写をはじめ、物語の中に鮮やかな色彩が満ちあふれていること。
小さな桃色の体に青い翼と尻尾をもつ「青い明け方の鳥」が魅力的で、子どもの旅に優しく寄り添う姿がホッとさせてくれる存在であること。
さらに、おじさんが持っている、キラキラ粉とピカピカ粉。真っ黒なおじさんと対比するように登場する真っ白なお爺さん。影の涙の存在……など童話らしい楽しさがあちこちに散りばめられています。
ノーベル文学賞作家・ハン・ガンさんが描く、涙をめぐるあたたかな希望の物語。やわらかく美しい文体は、ハン・ガンさんの作品を初めて読む方にもおすすめです。また、ハン・ガンさんご自身が長年のファンでいらしたというjunaidaさんの挿絵は、ハン・ガンさんの童話世界をさらに奥深く、神秘的に彩っています。物語を読んだ後にあらためて表紙を眺めるとまた新たに発見することがあるかもしれません。
涙を流すという行為が、いかに人の心を救い、浄化させるのか。そして、表面的な涙の有無だけでは測れない、人が心に抱える悲しみや希望について、深く考えるきっかけを与えてくれるあたたかな物語です。
この書籍を作った人
1970年、韓国・光州生まれ。延世大学国文学科を卒業。1994年、ソウル新聞新春文芸に短編「赤い碇」が当選し、作家デビュー。2005年、『菜食主義者』(クオン)で李箱文学賞を、また同作で2016年にアジア人初の国際ブッカー賞を受賞。2017年、『少年が来る』(クオン)でイタリアのマラパルテ賞、2023年、『別れを告げない』(白水社)でフランスのメディシス賞(外国小説部門)、また同作で2024年、フランスのエミール・ギメ アジア文学賞を受賞。2024年、「過去のトラウマに向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」が評価され、ノーベル文学賞を受賞。他に『引き出しに夕方をしまっておいた』『そっと 静かに』(以上クオン)、『ギリシャ語の時間』(晶文社)、『すべての、白いものたちの』(河出書房新社)、『回復する人間』(白水社)などが邦訳されている。
この書籍を作った人
韓国生まれ。韓国の誠信女子大学、同大学院を卒業し、専修大学大学院日本文学科で博士号を取得。日韓の文学作品の紹介と翻訳に携わる。訳書にハン・ガン『菜食主義者』、キム・エラン『どきどき僕の人生』、キム・ヨンス『ワンダーボーイ』、ピョン・ヘヨン『アオイガーデン』、シン・ギョンスク『オルガンのあった場所』(以上クオン)、孔枝泳『愛のあとにくるもの』(幻冬舎)など。共訳書にハン・ガン『引き出しに夕方をしまっておいた』(クオン)など。著書に『在日朝鮮人女性文学論』(作品社)がある。韓国語訳書の津島佑子『笑いオオカミ』にて板雨翻訳賞を受賞。
文:竹原雅子 編集:木村春子