
【連載】10月の注目の新刊&オススメ絵本紹介 〜思いを伝える絵本&新刊児童書編〜

読むと楽しくなる絵本、心の底から笑える絵本、意外な知識が詰まった絵本……。絵本にはいろいろなタイプがありますよね。今回、ご紹介するのは、静かな秋にふさわしい、メッセージが込められた新刊絵本。子どもと一緒に読むのももちろん良いですが、たまには一人で、本のページをめくってみてはいかが?
★新刊★「ピン!」が教えてくれる、人と人との心のつながり。
長く続いたステイホームによって、人と接する機会が少なくなった反面、SNSの発展により、始終誰かとつながっているような忙しなさも感じる昨今。でも、ふとした瞬間に襲ってくる孤独と疎外感……。今、私たちはかつてないコミュニケーション不信に陥っているのかもしれません。
そんな心を「ピン!」と救ってくれる絵本がアメリカで生まれました。
作者のアニ・カスティロさんは、本作がデビュー作。すでにアメリカでは子どもだけでなく大人のファンも多く、「ピン!」の続編の発売が決まっているそうです。
そして、翻訳を担当したのは、エッセイ執筆を中心に、翻訳、作詞、バンド活動 、ナレーションなど言葉と音の世界に携わる活動を続ける、内田也哉子さん。
今までにも絵本の翻訳を手がけら、そのどれもが内田さん独自の世界観を放ち、たくさんの人を虜にしています。
本棚にそっと並べておきたい、心に寄り添ってくれる一冊です。

作:アニ・カスティロ(Ani Castillo)
メキシコ・グアダラハラで生まれ育つ。現在は、カナダ・トロント在住。2児の母。コミュニケーション、アート、デジタルメディアについて学んだ彼女の作品は、メキシコ、カナダ、アメリカなどで展示され、人気のマンガ「Pu p a & Lav i n i a」は、メキシコの新聞で1 0年にわたって連載された。また、彼女の仕事は多くの共感を得て、メンタルヘルスアメリカ、国境なき医師団、カナダメンタルヘルスセンターとの仕事につながっている。

訳:内田也哉子(うちだ・ややこ)
1976年東京生まれ。エッセイ執筆を中心に、翻訳、作詞、バンド活動 s i g h b o a t 、ナレーションなど、言葉と音の世界に携わる。幼少のころより日本、米国、スイス、フランスで学ぶ。三児の母。著書に『ペーパームービー』(朝日出版社)、『会見記』『BROOCH』(ともにリトルモア)、樹木希林との共著に『9月1日 母からのバトン』(ポプラ社)など。絵本の翻訳作品に『たいせつなこと』(フレーベル館)、『岸辺のふたり』(くもん出版)などがある。
Photo by:AKINORI ITO(aosora)
★新刊★男の子が出会った「スマイルショップ」で売っているものとは……?
買い物! ショッピング! その響きだけでワクワクと心躍りますよね。「何を買おう」と悩んでいるときも、お店を見て回っているときも、お気に入りのものを見つけた瞬間も、それが大切なものであるほど、長く思い出にも残ります。
でも、本当に大切なものは、お金で買えないものかも……。それはたまたま訪れた「スマイルショップ」で出会えるものかもしれませんよ。
「スマイルショップ」
作:きたむら さとし
出版社:岩波書店
ああ、わくわくする。ぼくのはじめてのかいもの! なにをかおうかなあ??にぎやかな音や、あざやかな色、おいしそうなにおいのあふれる店先で、男の子は目をかがやかせます。ところが、とつぜんハプニングがおきて……。お金がなければ、なにもできない? いいえ、お金ではぜったいに買えない、すばらしいものがありますよ!
★新刊★人類の歴史が5分でわかる! 世界一やさしい「進化論」。
子どもは時々、ドキッとするような質問をしてくることがありませんか?
「ぼく(わたし)はどうやって生まれたの?」
そう聞かれたとき、言葉に詰まってしまう大人も多いのではないでしょうか? でも、これからはこの絵本を持ってきて「一緒に読もう?」といえばすべて解決! カラフルでポップなイラストと、分かりやすい解説で138億年前に誕生した地球の歴史から、今につながるあなたと私の物語を教えてくれます。
「きみは どこから やってきた? 宇宙誕生からはじまる いのちのものがたり」
作:フィリップ・バンティング
訳:ないとう ふみこ
監修:北山 太樹
出版社:KADOKAWA
ビッグバンから きみが生まれるまでの138億年が 5分でわかる!
「どうやって生まれたの?」と、お子さんが聞いてきたら、この絵本の出番です。
きみが生まれるまでに、すごいことがおきたんだよ。
さぁ、きみが生まれるまでの、なが――い旅が はじまるよ!
【監修者からきみへ】
専門的な科学用語や年代表記を使わずに、世界のなりたちをやさしく紹介しています。学術的にも正しい順序で生命の進化が描かれており、芸術作品と言ってもいいくらい。
この物語を読み終えたきみは、今の自分が存在するには自身の年齢では足りず、自分が生まれる以前の138億年が必要だったのだということに気づいていることでしょう。私たちは誰もが138億歳であり、この世界のすべてと関わっているのです。
―― 国立科学博物館 北山太樹
★新刊★別れは悲しいばかりではないことを教えてくれる絵本。
大切な人の死、身近な人との別れ。何度も体験したいものではありません。それだけ辛く、悲しく、喪失感を覚えるものだからです。
絵本にも「死」や「別れ」を描いたものがあります。それらは必ず「希望」や「未来」を感じさせるラストを迎えます。本当に辛い別れを体験する前に、絵本で疑似体験、追体験をしてみてはいかがでしょう。
「みどりバアバ」
作:ねじめ 正一
絵:下田昌克
出版社:童心社
花屋のみどりバアバが作るコロッケは、大きくておいしい。バアバは「毎日お花を手でさわって、お花の栄養をいっぱいもらっているからだよ」と、こうくんに手を見せてくれた。でも、やがて右手に力が入らなくなり、バアバはしんでしまう。こわくなって涙が出てきたけれど、花屋の栄養たっぷりのバアバの手をさわったこうくん。お葬式が終わった夜、みどりバアバのお店にいくと…。バアバと向き合う男の子の気持ちを丁寧に描く。
みどりバアバが「花屋はわたしにとって、生きることなんだよ」と言ったとき、「そうだよ。みどりバアバの生きるなんだよ!」と応援したこうくん。そんなこうくんが、みどりバアバの死とどう向き合うのか…。認知症の母親を毎日介護し、「生きる」と向き合い、その死とも向き合ったねじめ正一が、みどりバアバとこうくん、父さんの心の機微をあたたかなまなざしで描いた作品。
●親子で読みたい児童書4冊をご紹介します。
小学校に上がるとそろそろ絵本から文字の多い読み物を読んでもらいたいというパパママは多いです。でもいきなり「本を読みなさい」と言われても、どう読んだらいいのか分かりませんよね。
「絵本は好きだけど、本は読まない」そんな悩みを抱えるパパママの声が絵本ナビにも寄せられてきます。解決策のひとつは「読み聞かせ」。文字の多い読み物も、一人読みできるまでは親御さんが読んであげることです。そうして、少しずつ文字の多い読み物を聞けるようになると、「自分でも読んでみよう」と子どもの好奇心を刺激することにつながります。
10月に発売されたばかりの新刊の中から、親子で楽しむのにオススメの児童書をご紹介します。
★新刊★まずは絵が多い低学年向けから「聴く」ことに慣れましょう。
ステップアップにオススメなのが、全ページに挿絵が入っている低学年向けの読み物。
絵が説明にもなっているので、子どもは目と耳でおはなしを理解することができます。全部一度に読まなくてもOK。1日10ページや、1章分だけと決めて、少しずつ読んでいくことも、子どもには新鮮。一冊読み終えた後の達成感も味わえます。
10月に発売された新刊読み物の中から、挿絵がふんだんに盛り込まれた、児童書へのステップアップにオススメの2冊をご紹介します。
「フルーツふれんず ブドウくん」
著:村上 しいこ
絵:角 裕美
出版社:あかね書房
学級委員のブドウくんは、クラスのみんなを注意しがちで問題になってしまう。でも、ブドウくんは入院中のお母さんに話すため、学校の様子を一生懸命に見ていたら、つい気になってしまったのだ。それを知ったみんなは、休みの日にブドウくんを虫取りに誘うけれど……。まじめなブドウくんと、彼を思いやる友だちのあたたかい心を感じるお話。小さな顔にあこがれるスイカちゃんのお話『フルーツふれんず スイカちゃん』の続編!
「くまのこのるうくんとおばけのこ」
著:東 直子
絵:吉田 尚令
出版社:くもん出版
すべての見開きに、挿絵が入りますので、はじめての1人読みにもぴったりです。
年齢の目安 一緒に読んであげるなら:4歳から 1人で読むなら:6歳から
一緒だったのは一日だけ。でも、ふたりの友情はずっと特別。
るうくんは天気のよいある日、さんぽに出かけます。「こんな日は、ぽんぽん山にのぼろう」と、山へ向かう途中、ぶつかった何か。それは、おばけのこでした。仲良くなったふたりは一緒にぽんぽん山にのぼることにします。
お互いをはげましながら、ふたりは山をのぼっていきます。途中、分かれ道に差しかかり、おばけのこが言います。「両方の道を行ってみようよ」 ふたりは別々の道を進んで、頂上で会おうと約束しました。
先に頂上についたのは、るうくん。おばけのこを待ちますが、だんだん日が沈んでいきます。一方、おばけのこは、るうくんのことを思いながら、苦手な坂道を懸命にのぼります。ふたりは無事に頂上で出会えるのでしょうか。
人気歌人・東直子さんがやわらかい言葉で紡ぐ、やさしく、どこか切ないお話に、人気絵本作家・吉田尚令が絵を添えます。すべての見開きに挿絵が入りますので、親子で読むのにも、はじめての1人読みにも、ぴったりです。
★新刊★「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」の作者・廣嶋玲子さんの新シリーズ。
テレビで放送されている作品から興味を持って、原作の本を手に取るのも、物語に興味を持つきっかけとしてはとても大切な瞬間です。「かいけつゾロリ」や「おしり探偵」、「ふしぎ駄菓子屋」を観ているお子さんもいらっしゃいますよね。これらは全て児童書が原作のアニメ作品です。
10月に発売されたばかりの新刊『猫町ふしぎ事件簿」は、「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」の作者・廣嶋玲子さんの新シリーズ。「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」、廣嶋玲子さんファンにオススメの児童書です。
「猫町ふしぎ事件簿 猫神さまはお怒りです」
著:廣嶋 玲子
絵:森野 きこり
出版社:童心社
ここはとある日本の町、「大根古(おおねこ)町」。ある日、小学4年生の遠矢は幼なじみ・真理恵のたのみをことわれず、オンボロ屋敷のふしぎな猫じゃらしをとってしまう。実はその猫じゃらしは、街の猫たちが大切に大切に育ててきた、特別な猫じゃらしだったのだ…。その夜、「つかまえたよ。さあ“おまざりさま”のところにいこう」とまっ黒な大猫が遠矢を連れにやってきた!町の猫たちが崇める「猫神“おまざりさま“」のさばきの前に引っ立てられた遠矢は、猫じゃらしを盗んだことをつぐなえ、と言い渡される。「おまざりさま」が気に入るであろう、「3つのおくりもの」を持ってくれば、ゆるしてくれるという。「おまざりさま」の呪いによって猫になった遠矢は、個性的な猫たちに助けられながら「3つのおくりもの」探しに奮闘する。そして、猫たちにとって価値のあるおくりものとは何なのかを知っていく……。
●読み終えた後、親子で話し合うきっかけになる一冊。
読書好きな子のお家では、「うちの子は一人読みできるから、一緒に読む必要はない」なんて思っていませんか? なんてもったいない! たしかに「本を読む」行為はひとりでもできますが、「読んだ本を共有する」ことは同じ本を読んだ人同士でできる、読書ならではの楽しみといえます。
ぜひ、お子さんの読んだ本を一緒に読んでみてください。そして読んだ後は、どんな所が面白かったか、どんなことを考えたか、親子で話してみてください。子どもの意外な発言を発見したり、成長を感じる瞬間があるはずです。
「イルカと少年の歌 海を守りたい」
作:エリザベス・レアード
訳:石谷 尚子
出版社:評論社
父から海に近づくことを禁止されていたフィンが、ある日海に落ちてしまった。溺れる! と覚悟したが、逆に海の中で自由に泳ぎまわれることがわかる。実はフィンは、詩にもうたわれたイルカ族の乙女の血を引く子どもだったのだ。人間が飛ばした風船がイルカたちに被害を与えていると知ったフィンは、なんとか助けたいと願う。だが、ひとりでは無理だ。今まで仲間はずれにされていたフィンが、勇気をふりしぼってクラスメートたちに訴える。子どもたちの姿が、やがて大人にも影響をおよぼして……。紛争地の子どもたちを描き続けてきた作家エリザベス・レアードが、伝説をまじえながら海洋汚染をとりあげた力作。