最初に登場するのは、お庭に色々な野菜のたねをまいている親子。
色々な形をしたたねは、やがてカボチャやニンジン、キャベツやマメになります。
そうやって、毎年たねまきを繰り返すのです。
でも、この絵本は言うのです。
私たちは、もっと広くて、大きな庭に、たくさんのたねをまいてきました、と。
どういうことでしょう。
例えば、風。
大きくて強い風が、様々な植物のたねを吹き飛ばし、遠くへ飛ばします。
例えば、太陽。
午後の日の光が、エニシダのさやを温め、乾かし、フライパンの上のポップコーンみたいに、たねが弾け飛びます。
雨も、川も、鳥も。
それぞれの方法でたねを遠くへと運びます。
動物たちは、自分たちが生きていく生活の中で、自らの体や毛皮にくっつけながら、いつのまにかたねたちを違う場所へと運んでいきます。
どんぐりだって…。
知らなかった!こんなにも世界の色々なものが「たねまき」という行動に参加しているなんて。そして、私たち人間だって、知らないうちに。
こうして、地球というひとつの大きな庭がつくられていくのです。なんて美しく、なんて感動的な事実なのでしょう。翻訳をされている梨木香歩さんによるあとがきの言葉も忘れられません。「…一人ぼっちで孤独だな、と感じるときは、自分は本来自分がいる場所から遠く、この辺境に飛ばされてきた種なのだ、と思えば、今生きていることそのものが、重大な任務のように思えます――(あとがきより抜粋)」
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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