「きょうは ピクニックびよりですよ」
お留守番をしているなおちゃんに話しかけてくるのは、かっぱ。このあたりでは、雨の日にお留守番をする時は、かっぱと一緒に過ごすのです。なおちゃんは驚いて聞きます。
「あめなのに?」
「あめだから!」
のりで巻いたおにぎりを持って、二人でお出かけです。人通りの少ない道を行き、やってきたのは緑の生い茂る林の中。おやつとふきのかさを買ってもらい、奥へと進むと目の前に広がったのは大きな広場 。真ん中には池があり、ほかの子どもたちもたくさん来ています。どんどん大きくなっていく池にやって来たのは船。「あめがたくさんふらないと辿り着けないところ」に向かうのです。そして着いた場所とは……。
どこもかしこも雨で濡れ、空は重く、どこか全体的に薄暗い……はずなのに。かっぱが案内してくれたその遊び場所の素敵なことといったら! 雨の中に佇む巨木や深い緑の美しさといったら!
「あめのひに みんなで あまやどり。これ、さいこうの ぜいたくです」
そんなかっぱの言葉に思わずうなずきながら、絵本の中の子どもたちと一緒になって静かに雨音に耳を傾けてしまうのです。こんなにも、しっとりと深く味わえる雨の絵本があるなんて。日常のすぐ隣にありながら、果てしないスケールの大きさをも感じさせてくれるこの世界観。むらかみさおりさんのデビュー作品なのだそうです。きっとこの絵本自体が、子どもたちの雨の記憶の一つとして残っていくのでしょうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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その日は朝から雨。お母さんは急ぎの用ができてしまい、出かけるしたくをしています。そこへピンポーンとベルが鳴り、なおちゃんが玄関をあけてみると、「どうも、かっぱです」と、緑色のおかしな生き物が立っているではありませんか! お母さんは「かっぱさんとお留守番しててね。きっとすごーく楽しいから」といって出かけてしまいます。こわくてテーブルの下に隠れたなおちゃんに、かっぱが声をかけました。「なおちゃん、今日はピクニックびよりですよ。」「雨なのに?」「雨だから。」
雨音に耳をすましたり、雨がいっぱい降らないと辿りつけない秘密の場所で遊んだり、雨に洗われた景色を見ながらおやつを食べたり……かっぱが案内する雨の日のピクニックは、すてきなことがいっぱい! 最後には「雨の日にみんなで雨やどり。これ、最高のぜいたくです」というかっぱの言葉が、しっとりと味わい深く心に残ります。
すみずみまで精密で、かつスケール感のあるファンタジックな絵が目にも楽しい、作者渾身のデビュー作です。
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