ひゃ〜ひゃりほ〜♪ 笛の音とともにやってきて、こちらに背を向けて立っているのは一体だれ? 頭に頭巾をかぶり、なんだか不思議な服を着て、ゆっくり振り返る。
「ねえねえ、そこのきみ……。
こんなかお、できる〜?」
わわ、なんて顔! 口はすぼめてひん曲がり、目の大きさも全然違って、鼻の穴は大開き。その迫力に圧倒されていると彼は言うのです。
「おいら、ひょっとこ。
おいらの真似、できたかな? どんどんいくよー!」
ひょっとこ? 驚いているヒマはありません。ニカッと笑ったかと思えば、舌をべろーんと出して、ほっぺを膨らませたり、歯をむき出してみたり。ま、まって、こんなの真似できるわけが……あ、隣の子は真似してる。じゃ、じゃあ私もちょっとだけ鼻の穴を広げてみたりして。
「こんなこと、できる?」
ひょっとこからの絡みは止まりません。今度はすっごく変なポーズを見せてきます。仕方ない、隣の子と一緒に組んで、よっ!
いつもとびっきり明るい絵本を届けてくれるザ・キャビンカンパニーさんの最新作の主人公は、なんと「ひょっとこ」。絵が強いです。顔が強いです。画面から押し寄せてくるパワーに大人は負けてしまいそうです。だけどもしかしたら、子どもたちにはこのくらいがちょうどいい! とまどったり、笑ったり、恥ずかしがったり、ノリノリだったりするうちに、一緒に汗をかいて終わってみればちょっと心が晴れている。これが笑いの神様か…。お祭りで実際にひょっとこに出会ったことがある人も、初めて見るよという人も、実はちょっと怖いと思っていた人も。絵本を読んでいるうちに、彼らの存在の意味を実感してしまうのです。
さあ、読むときは。大人も子どもも気合いを入れてくださいね!
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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