お店の看板、おおきな木の枝、あっちへこっちへ走る電線。背伸びしたってぜんぜん届かない、高いところが町にはいっぱい。
電線に、なにかが引っかかったら? お店の看板が、壊れちゃったら?
考えてみれば、ちょっと不思議。いったいどうやって、直してるんだろう?
パトカーみたいに、サイレンは鳴らない。ゴミ収集車みたいに、毎朝見かけるわけでもない。だけどみんなの生活と安全を支える、背高ノッポのすごいやつ。「高所作業車」のお仕事に密着!
田舎町を走るバスのお仕事を、温かに描き出した『ピンポン・バス』をはじめ、意外な視点からはたらく車の活躍を紹介する「竹下文子×鈴木まもる のりもの絵本」シリーズ11作目。今回のテーマは、高いところで作業する人々を助ける、高所作業車。
高所作業車とひとくちにいっても、その活躍の場により種類はさまざま。
荷台部分に、人ひとりが乗り込めるカゴつきのアームを搭載したトラックは、町でもたびたび見かけるおなじみの顔。
でも、高い枝になるさくらんぼの収穫に使うのは、キャタピラとアームとカゴだけの、ちいさな高所作業機。
おおきな旅客機を洗うときには、ながーいアームを備えたものと、広い作業場をグインと持ちあげるタイプが、力を合わせてピカピカに!
ほかにも、トンネルの天井を点検したり、広い倉庫のなかで荷物を運んだり、見たことのないような種類の高所作業車ががんばる場面を、さまざまに紹介しています。
そして絵本の後半では、台風におそわれて停電してしまった暗い町に、たくさんの高所作業車が緊急出動します。町に光をとりもどすため、はげしい風雨にさらされながらがんばる、高所作業車と工事の人たち!
手に汗にぎるハラハラな場面から、おだやかな人々の生活のまんなかまで──いろいろな場所で高所作業車がどんなふうに活躍しているのかを描いた本作は、はたらく車の絵本をたくさん読んできた人でも、新鮮に楽しめる作品です。
(堀井拓馬 小説家)
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