「うさぎさん、かわいい」
「ごはん、あげるね」
広島県大久野島に暮らすうさぎたちに会うために、毎日たくさんの人々がこの島を訪れます。そこにいたのが一匹の白いうさぎ。
「あの子、白いね」
「あの子のおかあさんも、白い?」
一組の親子の何気ない一言が、封印されていた過去を呼び覚まします。場面は、第二次世界大戦時の島の光景へ。工場が立ち並び、そこには防毒マスクに身を包み、実験を繰り返す人々。手渡されたかごの中には真っ白なうさぎ。かつて大久野島では、毒ガスが製造されており、その実験動物としてうさぎが使われていたのです……。
まっすぐとこちらに目を向ける、絵本の中の可愛らしいうさぎ。私たちはその存在をどう捉えたらいいのでしょう。彼らは自分たちの意思でここに暮らしているわけではありません。戦争が終わった今もまだ、新たな問題を抱え続けているのです。
絵本作家近藤えりさんが「うさぎの島」と呼ばれる大久野島と出会い、その土地の歴史を知ったことがきっかけとなったというこの絵本。日本絵本賞受賞作家たてのひろしさんと共に取材を繰り返し、美しくも緻密な島の風景やうさぎたちを描きながら、戦争の記憶と島の環境問題が複雑に交差していく物語となっています。
戦後80年を迎える今、私たちにできることは「過去と向き合い、未来を考える」こと。絵本を通して、様々なことを知り、話す場が増えていくことを願います。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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毒ガスを製造し、「地図から消された島」広島県・大久野島。
過去と未来を結ぶ、忘れてはならない物語。
◆「うさぎのしま」に眠る、知られざる真実―。戦後80年によせて、今子どもたちに届けたい物語。
◆広島県大久野島で暮らす、たくさんのうさぎたち。この島には、第二次世界大戦中、毒ガスの実験動物として、うさぎが使われていた過去があった。戦争の記憶と島の環境問題が交差する、著者渾身の一冊。
◆『ねことことり』『どんぐり』で日本絵本賞受賞した作家たてのひろしと、柔らかなパステル画が魅力の近藤えりによる共作。
*巻末に、解説「地図から消された島-大久野島と戦争とうさぎ」(“大久野島のうさぎはどこから来たのか” 執筆/兼子伸吾・福島大学共生システム理工学類教授)と、あとがきを掲載。
広島県・大久野島。
「うさぎのしま」として親しまれるこの島で、一組の親子が白いうさぎに出会う。
―「あの子のおかあさんも、白い?」
何気ない一言が、封印された過去を呼び覚ます。
時は、第二次世界大戦へ―。
防毒マスクに身を包み、毒ガスを製造する人々。手渡されるかごの中には……。
かつてこの島は、「地図から消された島」だった。
無垢な存在が、浮かび上がらせる戦争の記憶と、現代の環境問題。
過去と向き合い、未来を考える。忘れてはならない「記憶」の物語。
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