ご近所のS君を保育所にお迎えに行った後、よくふたりで読みふけったのが、この絵本でした。
おおらかで優しいバムが、無邪気でマイペースなケロを連れて、池で凍えたあひるのかいちゃんを救出するストーリィです。
S君は、ケロがかいちゃんと仲良くなり、際限なくトイレットペーパーを使ってミイラごっこをする場面が大好きでした。
S君のお母さんによれば、小さい時、S君はトイレットペーパーの切れ目がわからずに、ペーパーを使いすぎ、自宅のトイレを水びたしにして叱られたトラウマが、まだ残っているのかもしれないと、いうことでした。
ある時、S君は自宅からトイレットペーパーとぬいぐるみを幾つも抱えて、うちへ遊びに来ました。そして、ミイラごっこを始めたのです。
と言っても、S君がお医者のミイラ先生になり、ヌイグルミイラたちは怪我をした患者さんというお医者さんごっこの設定でした。私も看護師役を頼まれました。
ミイラ先生は、いつもトイレットペーパーを好きなだけ使って治療をします。その度に「痛くしないからね!」とやさしく言って、ニコニコしながら、患者さんをトイレットペーパーでグルグル巻きにしたのです。癒されたのは、明らかに患者さんよりもミイラ先生でした。
絵本の育む想像力は大きいと思います。
幼児の場合、現実には実現できない遊びでも、絵本の想像の世界なら、遊んだつもりになれるのかもしれません。
ケロがミイラごっこを誰にも咎められず、思いきり遊びとして楽しめたので、読者の子どもたちも、その楽しさを追体験できるのでしょう。
まして、S君は現実のごっこ遊びとしても再現できたのですから、なおさら癒されたと思います。
特にこの絵本は、ヤメピやおじぎちゃん他、小さなキャラクターの姿も絵で表現される、遊びの宝庫です。ですから、読者に合わせて、読み聞かせの場合も、各ページの絵が隅々まで味わえるように、読むペースを調整してあげられると良いと思います。