あそびに夢中になってたら、いつのまにかすっかりおそく……。
朝と夜との、あいだの時間。
安心できる朝とはちがう。危険なだけの夜ともちがう。
いちばん不気味な、その世界。
表紙をめくってあらわれる、真っ黒なページと、囁くように小さなタイトル……。
「ついてくる」
不穏も不穏……不吉も不吉……息さえひそめて、読み進めなければならないような……。
描かれているのは、帰り道を急ぐ主人公が見る景色です。
薄暗く、狭い路地。
橋の下を通る、川原の小道。
細く奥までつづく、ひと気のないトンネル。
暗がりの向こう……明かりのない窓のなか……うっかり目をこらせば、そこにいるなにかに気づいてしまいそうな、そんな気配に満ちています。
そして、主人公のうしろをついてくる、あやしい気配……。
ひた、ひた、ひた
かさ、かさ、かさ
あわててふりむくと……。
なあんだ、ひょうしぬけ。
それは猫だったり、ビニール袋だったり……。
だいじょうぶ、だいじょうぶ。怖いことなんて、なんにも起こらない!
……でも、あれ?ねえ……どこに向かってるの?
意味がわかると怖い系? なんとはなしに不気味系? いえいえ、ちがいます。
怖い絵本はいろいろあるけど、これは誰もがゾクゾク、キャー! っと悲鳴の正統派。
あおりにあおった不安と恐怖が、ラストで芽を出し花咲かす……。
読んでるときにあやしい気配を感じても、怖がらなくても大丈夫! だってあなたの後ろにいるのは……。
(堀井拓馬 小説家)
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