あらいぐまのアリスはのんびりや。
「はやくおもちゃをかたづけなさい」
「はやくおふろにはいってよ」
おかあさんに言われるけど、アリスは「はあーい」と返事をして、のんびりゆっくりしています。
ある朝、いつものようにのんびりゆっくり寝ていたアリスは、おかあさんに起こされます。
「きょうはおともだちとピクニックにいくんでしょ」
おともだちが迎えにきて出発です。
アリスはいちばんうしろから、あっちを見たり、こっちを見たり。
「アリスちゃん、はやくー」「もう、おいてっちゃうよ」
でもアリスは、みんなが気づかずに通りすぎてしまったものを、ちゃんと見ているのです。
花や、川の魚や、おいしそうな木いちごも!
こみねゆらさんが描くアリスの時間は、繊細でファンタジック。おうちのかわいい壁紙や調度品の数々にも女の子がきゅんとくるエッセンスが詰まっています。
『ピン・ポン・バス』など、子どもの日常のリズムをつかんでお話を作る竹下文子さんの言葉とよく合って、素敵な雰囲気の絵本になりました。
いつも「はやく、はやく」と急かされている子どもたち。
きっとアリスを見て幸せな気持ちになるのでしょう。
我が家では、読み聞かせしたあと、娘がしばらく一人でページをめくっていました。
子どもも大人もアリスに癒され、自然にゆったり、にっこり・・・。
アリスがお昼寝をする木陰から、やさしい風が吹いてくるようです。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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