1978年初版、五味太郎さんの復刊絵本です。
首からポシェットのようなものをさげて、のんびり空を飛んでいたわたりどり。
湖の上に来て、はっとして……
この村いちばんの高い屋根のてっぺんにまいおり、
「くじらだぁ!」
と大きな声で叫びます。
でもみんなしらんかお。だって、湖のこの村では誰もくじらのことを知らないから。
一人だけ、本を読んでくじらを知っているおじさんがいて、「これがくじらだ」教えようとします。
さあ、びっくりしたみんなは湖に走っていきますが……。
「くじらだぁ!」と叫ぶ声に、くじら探しがはじまったものの、いっこうに見つからないのです。
何しろ知らないものを探すのですから、難しいったらありません。
もしかして、わたりどりは嘘をついているの?
くじらを食べられる「魚」だと勘違いし、我先にくじらを探す、ユーモラスな場面。
そして探せど見つからないくじらをついに見つけた!と思いこみ、めがけていったら勘違い……の場面。
「くじらの くのじも みえやしない……ざんねん むねん」と続くテンポのよさは、まさしく五味太郎作品です。
そもそも湖にいるはずのないものですもの。
しかし五味太郎さんならではの、おなじみの茶色と青色が……
最後、いきいきと大きなくじらを描き出しますからお楽しみに!
『きみはしっている』『ちいさなきしゃ』につづく、五味太郎クラシックシリーズの一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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