
オーストラリアの北に位置する東ティモール共和国は、2002年に独立し生まれたばかりの、人口およそ120万人ほどの国。 豊かな棚田に囲まれたマヌタシ村では、森の中のあちらこちらで、村人たちがせっせ、せっせと穴を掘っています。 一体この穴は、何の穴? …これこそが、人々にとっての「トイレ」。でもこのトイレが「未来をつくる」って、どういうことなのでしょうか。
東ティモールには長い間、トイレがありませんでした。大勢の人々にとって、自宅の裏など外でうんちやおしっこをするのが当たり前の生活。 放置されたうんちにたかったハエが食べるご飯にたかる。川に流れたうんちは、人々が飲む水を汚してしていく。こんな不衛生な環境は、下痢やコレラ、赤痢などの病気となって子どもたちを襲い、次々とその命を奪ってきたのです。 屋外でウンチをする習慣が、子どもたちの命に大きな影響を与えている。 そのことを学んだマヌタシ村の人々は、清潔なトイレづくりのために自分たちで立ち上がりました。
どこか懐かしい山々の風景、大地を駆け回って遊ぶ子どもたちのまぶしい笑顔、太陽とともにゆっくりと過ぎていく時間。 森の雨音、肌にヒヤっとするような空気まで伝わってくるひとコマひとコマに優しい気持ちが湧きたってくるのは、 写真を通して作者・会田法之さんの村の人々へのまなざしを体感できるからでしょう。 電気もガスも水道もない生活の中では、燃料の薪を集めたり、トイレのうんちを流す水瓶の水を汲んだりすることも子どもたちの仕事です。 精いっぱい生きる彼らの未来が、トイレができることで輝かしいものになってほしい。 ページをめくりながらそんな願いにかられていると、作者の言葉にハッとする瞬間がおとずれます。 「僕はあの日まで、トイレの大切さなんて考えたこともありませんでした。」 あの日…そう。トイレがないマキタシ村のくらしは、空気のようにトイレが存在する日本の私たちにとっても決して遠い国の話ではないのだと。
東ティモールにトイレをつくるプロジェクトには、長く日本の人々がかかわっているのだそうです。 考えること、そして、自分から動き始めること。 そんな二つのきっかけを、この本は子どもたちに優しく問いかけてくれます。
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)

東ティモールのマヌタシ村にいくと、みんながせっせと穴を掘っていました。 みんなで一生懸命、トイレをつくっているのです。
日本ではあたりまえにあるトイレですが、とても大切なものだって知っていましたか? トイレがないと、屋外でうんちをします。すると、うんちに蝿がたかります。 その蝿はご飯にもたかるので、間接的にうんちを食べてしまうことになります。 東ティモールではそんな不衛生な環境が、子どもたちの多くが下痢やコレラ、赤痢などの病気にかかる原因となっています。
その環境を変えてくれるのが、トイレです。 トイレをつくることで、みんなが健康になり、元気に学校に通い、集中して勉強ができるようになる。そんな子どもたちが、東ティモールという生まれたばかりの国の未来を築いていくのです。
トイレづくりは、子どもたちの未来をつくることなのです。
このトイレをつくるプロジェクトに長い間、日本の人々がかかわっています。 遠くからもその国を応援し、かかわっていくことができる。 まずは、その国のことを知ること。その第一歩になる写真絵本です。

2014年刊行。東ティモールで、農村の人が自宅のトイレを作る様子を取材した写真絵本。2002年に独立するまで、戦争状態にあったことを知る大人たちが、子どもたちの未来のために、安全な飲み水・衛生環境を整えていく。
コーヒーで有名な国だが、あまりよく知らない国でもあった。
トイレが整備されていないので、水が汚れたり、感染症などで子どもたちが亡くなったりしていた。大人たちが衛生について学び、意識を変え、みんなの未来のためにトイレづくりをする様子が尊い。
筆者は東日本大震災でトイレの重要さが身に染みたとも言う。
トイレというと、いつでも安全に使えるのが当たり前の生活をしてきているので、この本を読んで、改めてそのありがたさがわかった。
大人たちが意識を変えて、よりよい未来を作っていくために行動している様子を、子どもたちは見ている。そしてその子どもたちが大人になって、次の世界を作っていく。
それも当たり前のことだが、どういう姿を見せるべきなのか?ということも、同時に学んだ。
大人は大人の、子どもは子どもの役割があることも、学んだ。
この本は、是非、大人に読んでもらいたい。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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