
「いつかあなたは、とてもうつくしい建物をたてるでしょう」
そんなお母さんの、予言のようなことばとともに育った、ひとりの男の子。 彼はだいすきな積み木遊びのなかで、とある秘密に気がつきます。
「そうか! 積み木をくみあわせたら、どんなカタチでも作り出せるぞ」
円錐形で花を。 三角形でクモの巣を。 六花形でハチの巣を。
「空にはカタチがあるんだろうか? いっぽんの木には、いくつのカタチが隠れているんだろうか?」
男の子は、自然のなかのカタチが大好きでした。 そして、いつしか彼は、自分でも自然のなかにカタチを作り出したいと考えました。
「自然と同じくらいすばらしい建物」というカタチを。
彼の名は、フランク・ロイド・ライト。 アメリカでもっとも偉大な建築家となる少年です。
フランク・ロイド・ライトといえば、滝の上にせり出すようにして建てられた「落水荘」や、旧帝国ホテル本館の設計により、日本でも広く知られる名建築家! 近代建築の三大巨匠のひとりにも数えられる、かの偉人の仕事と生涯に焦点をあてた絵本です。
幾何学模様や単純な図形を、風景のなかに溶けこませた、独特のイラスト。 私たちはそのイラストを通して、ライト少年の見ていた光景をうかがい知ることができます。
そう、ライト少年の見る世界は、人とはちがうものでした。 自然を愛した彼は、そのなかに、単純な図形と、それらのつらなりを見出していたのです。
彼の生涯から学ばされるのは、幼い子どもの気づきや疑問が、どれほど強い原動力として未来に働きかけるのか、ということ。 そうした子どもの原風景はたいせつに育んでいかなければならないな、と、あらためて気づかされました。
それから、興味深いみどころが、ひとつ。
ライトが建築家として今まさにデザインをおこなっているページ、彼の仕事場、その壁をよくみると—— なんと、浮世絵が飾ってあるではありませんか!
描かれているのは、歌川広重の作品「東海道五十三次 丸子 名物茶店」。 日本文化を愛し、浮世絵をコレクションしていたというライトの人となりがうかがえる、たのしいシーンです。
建築と自然との調和をめざしていたライト。 積み木遊びに夢中で、自然の形を愛したありし日の少年は、大人になってどんな建築を設計したのか? ライトの革命的な建築の数々をイラストレーションで!
(堀井拓馬 小説家)

自然の中には どれだけいろいろなかたちが かくれているのだろう!
男の子は小さいころにお母さんにもらった積み木に夢中になりました。 やがて大きくなった男の子は、自然とふれあううちに、自然の中に隠れたたくさんのかたちに気づきます。 クモの巣に三角形、カエルの通り道にアーチ、ハチの巣に正六角形… そして、この豊かな自然のようにすばらしい建物を 自分もつくってみたいと考えた……
自然をいかした建物をつくり、コルヴィジェ、ルーエと並んで「近代建築三大巨匠」のひとりとうたわれ、日本にも大きな影響を与えた、フランク・ロイド・ライトの伝記絵本。 巻末には本に登場する建築物を紹介しています。 小学校中学年から

建築家という職業、スケールが大きく、夢があって素敵だなと憧れます。
偉大な建築家、フランク・ロイド・ライト。彼が天職とも言えるこの職業についたのは、お母さんの導きと自然とのふれあいがあったからだとか。母は偉大なり、と感じました。
ロイドは積み木の形、積み木でつくる形、そして自然の中の様々な形を通して「形の中に形が隠れている」ことや「形の美しさ」を実感していき、自分でも形ある建物を建ててみたくなります。
「形の中の形」って、どこかで同じようなことを聞いたなぁ〜と記憶をたどってみたら、北斎の絵の描き方がそうでした。天才が物事を突き詰めていくと同じようなことに行きつくのでしょうか。ロイドの仕事部屋に、北斎ではありませんが浮世絵が飾られているのも興味深いです。
温かみを感じるこの絵本には、ロイドへの愛と尊敬を感じます。表紙をあけてまず目に入る見返しの絵から嬉しい気持ちになります。そして、絵の中にロイドの様々な建築物が溶け込むように描かれているのが面白いです。ロイドが自然の中に溶け込むように建物を作ったように・・・。
(なみ@えほんさん 50代・その他の方 )
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