土用の丑の日といえば、誰もが思い浮かべる「うなぎ」。大昔から日本の食文化に根付いていますが、どこで生まれてどう成長するのか等、長らく謎のままの魚でした。
2009年の夏、日本のうなぎ研究グループが、世界で初めてうなぎの産卵場を確認しました。それは日本からはるか遠く、マリアナの海でした。「日本の魚」というイメージが強いうなぎが、海を渡って、こんなにも長い距離、日本まで旅してきていたなんて・・・。
この絵本の、うなぎのうーちゃんのお話は、この発見をもとに作られました。
南の海で生まれ、日本の川へやってきて、そしてまた産卵場へ戻るまで、うーちゃんと一緒に旅をして、うなぎの生態を学びます。
日本の自然豊かな美しい川辺の景色も、自然を失った河口周辺の景色も、どちらも描かれています。まだ成長しきっていないうなぎの「シラスウナギ」の漁の光景も描かれており、現在のうなぎをとりまく様々な環境の試練や、資源の問題が見えてきます。
2014年、国際自然保護連合(IUCN)で、ニホンウナギは絶滅危惧種の指定を受けました。他の国で獲れるうなぎも、数が少なくなっています。うなぎが日本の食卓に並ばなくなる日も来るかもしれません。
「他のうなぎたちも、うーちゃんみたいに考えて生きているのかな」、「この川はうーちゃんが生きやすいところかな」、と想像してみたり。うーちゃんのお話を通して、子どもたちが現在の様々な問題を考えるきっかけになるといいですね。
文章は、うなぎの研究者である黒木真理さん。郷愁あふれる絵は、毎日新聞夕刊にて、「帰りたい私だけのふるさと」の挿絵を4年にわたり担当された須飼秀和さん。
うーちゃんの一生の大冒険と、うーちゃんの目から見た海と川の景色、地球の姿を、じっくり味わってみてください。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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