小さな鞄を手に持って、小さな女の子が歩いて目指す場所は「あそこ」。
「いつになったら たどりつけるのかしら?
あそこへ いくのに どれくらい かかるかな?」
女の子が「あそこ」へ思いをはせながら歩く様子を見ながら、
読者はきっと考え始めているはず。
「あそこって一体どこのことだろう?」
いま自分がいる「ここ」ではない「あそこ」。
そういえば、子どもの頃の自分と言えば、まだ見知らぬ「あそこ」への憧れの気持ちでいっぱいだった気がする。
まだ行ったことのない場所、会ったことのない人との出会い、もっと大人になった自分がいる世界・・・。
「どこか」ではなく「あそこ」。
そして、その気持ちは色々な経験や喜びや不安が重なっていきながらも、
本質的には変わっていないのかもしれない、とも。
翻訳をされている詩人の加島祥造さんが語ってくれます。
「人生とはまだ知らない『あそこ』への旅。
遠いのか、近いのか。楽しいのか、こわいのか。
まだ見知らぬ『あそこ』へ、いつか自分も行く・・・と感じる心が大切なのだ」
子どもでも大人でも、少し立ち止まってしまった時。
小さな女の子の心の冒険と一緒に、
自分にとっての「あそこ」をもう一度探しにいってみるのもいいのかもしれません。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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