考えるとこの絵本ほど、何度も読みながらそのあくの強さに違和感を覚えた本はないのです。
主人公のネコは、100万回もいろいろな人に飼われながら、その人を好きにはなっていない、むしろ嫌いだというのです。
しかも100万回も不幸なことに、ネコは不幸な死に方をします。
従順さのないこのネコに違和感を持ち、このネコの自分本位さを疎ましくも思いました。
それだけに、自分のために生きた時、自分のあこがれたネコに軽くあしらわれながらも、初めてとても素朴で素直な気持ちになったネコが可愛くてたまらないのです。
子どもには感覚的に理解できる世界のようです。
理屈ではなく、このネコを素晴らしいネコに思えるようです。
話としては痛烈なものを持ちながら、人に愛される要素をもった絵本。
佐野さん自身の人生観から発せられた絵本でしょうか。