完全な絵本というものがあるとするならば、これは数少ないそのうちの1冊。完璧な幸福がここにはある。
いちばんのなかよしさんと森で探検、見つけた宝物でとびきりのごちそうを作り、みんなへもおすそわけ、残ったもので新しく二人の宝物を作って持って帰る。
親密な関係と開かれたコミュニティの双方を、おいしさという最上の方法で満足させるしあわせ。
とりあえずこの本を好きにならない子に出会ったためしがない。
しあわせいっぱいで来ている子はあたりまえのようにこの贈り物を受け取るし、そういうことに慣れていない子も森のみんなでカステラをほおばるシーンでは、自分も小動物の一員になっておすそわけをぽっちりもらったような顔をする。そんな子には別の機会に膝に乗せて抱きかかえるようにしてこれを読んでやると、もっとリラックスして前のほうのページから楽しめるようになるものだ。
絵本に登場するごちそうのレシピ本でも、ぐりとぐらのカステラは定番中の定番。ちびくろさんぼのホットケーキは冒険つきのスリルがたまらないけれど、ぐりとぐらは自分たちでかまどをこさえて火をおこして調理をするという、これはこれで子ども的にはスペクタクルな展開。ふっくらするのを待っている間さえもおたのしみになっているところがまた良しなのである。