お弁当の時間、自分の弁当箱を開けたゆずるくんは「うわっ、ピーマンがはいってる! ぼくピーマンきらい、あっかんべー!」といやな顔。
その様子をピーマンが見ていました。
「ゆずるくん、ぼくのこと きらいなんだ……」
黒いりっぱな眉、真っ赤な頬、むきだしの膝小僧がかわいいピーマン。
うるうるした目からは、今にも涙がこぼれそう。
「畑にいたころは、お弁当のおかずになるのが夢だったのにな……」
ゆずるくんが「おかしはだいすき」と言っているのを聞いたピーマン、すごいことを思いつきます。
「ぼくも おかしに なってみよう!」
えっ、ピーマンって、お菓子になれるの!?
包み紙を体に巻きつけてキャンディに変身したり、ケーキの中に埋まってみたり、チョコレートをかぶったり。
ピーマンはがんばります!
でもなかなかうまくいかないみたい。
しょんぼりするピーマンを見つけたゆずるくんは……?
画面いっぱいに描き込まれたあざやかなお菓子と、その中でがんばるピーマンの姿がシュールです。
ありえない組み合わせに、思わずぷっと笑い出してしまいそう!
でもピーマンは真剣な顔。けなげで目が離せません。
“嫌われもの”になりやすいピーマンですが、こんなに一所懸命でかわいいなら、もしかしたら子どもも「食べてあげようかな」って思うのではないでしょうか。
作者の岩神愛さんは、絵画工作講師をつとめる幼児教室で出会った子どもたちと、食育に悩む親御さんたちを見ていて、この作品を思いついたそうです。
ポップでカラフル、ちょっぴりレトロなテイストが魅力的で、探し絵も想像以上におもしろい!
今後、ファンが増えることまちがいなしですね。
次作『おもちゃになりたいにんじん』もあわせてご覧下さいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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